第3章 因縁の残響
「それでもついてくるなら、他人のフリしてろ。ま~た無茶されちゃ困るっての」
斗亜が続ける。
操の顔が明るくなる。
「当たり前よ!あたしは絶対、蒼紫様に会うんだから!!」
恐怖よりも、希望が勝っている足取りで二人へ駆け寄る。
ガサッ。
半日歩いた時、ふと空気が変わった。
「志々雄一派か?」
斗亜と剣心の気配が一変する。
構えが低く、視線は鋭くなる。
「操、離れろ」
命令に近い声を斗亜がかける。
「あんたたち…本当に、狙われてるの?」
「いいから動け」
剣心の声は冷たかった。
その温度差に、操の背筋が凍る。
足が動かない。
二人は操を背に庇う形で、前へ出る。
「これでも御庭番衆の一員なのよ…」
操が一歩踏み出すと、血の臭いがする。
鉄のように重く、生暖かい臭気、視線の先は木の根元だ。
赤黒く染まった地面。
そこに背を預けるようにして座る男。
「この人…死んでるの?」
操の声が震えた。
「いや…生きている」
男の首筋を触り、わずかに脈があることを感じ取り斗亜が答える。
剣心は男の前に膝をついた。
「何か言い残すことはないでござるか?縁あって見届ける以上、出来ることはする」
男の胸が浅く上下する。
血に濡れた手が、剣心の袖を掴んだ。
「た…頼む…俺の…弟と…村を…志々雄の連中から…救って…くれ…」
男の腕の中には、九つにも満たぬ少年がいた。
意識はない。
だが、生きていることが分かる。
「必ず…助けるでござる」
「よか…った…」
声が途切れる。
力を失った手が、地面へと落ちた。
操が息を呑み、口を手で覆う。
剣心と斗亜は手を合わせ、短く祈った。
風が通り過ぎ、男の体温を奪っていく。