第3章 因縁の残響
「だから言ったろ!!!」
斗亜が崖下に向かって跳ぶ。
崖下の側面を蹴り、風を裂いて落ちていく操へ追いつく。
手首を掴み、抱き寄せる。
岩壁を蹴り上げ、上へと戻る。
地面を滑るように着地する。
気を失った操を、そっと横たえる。
「本当…無茶をする…」
頬には涙の跡。
その寝顔は、ただの少女だった。
斗亜の胸が締め付けられる。
「でも…この子が言ってたことも分かる気がする…」
小さく呟いて、頬の涙を指先で拭う。
「一番大事な人なんて…忘れられるわけねぇよな…」
斗亜の脳裏に、失ってしまった桜と幸太が過る。
「そうでござるな…」
剣心は斗亜の言葉に小さく同意した。
夜風が木々を揺らす。
その音だけが、しばらく三人を包んでいた。
「おーい…そろそろ起きろ…」
斗亜がいてもたっても居られず、しゃがみ込んで操の頬を軽く叩く。
ぺちぺちと乾いた音が夜気に溶けた。
「気絶しているだけでござる。そっとしておけ」
剣心が静かに制する。
斗亜は悔しそうに、歯を噛み締める。
「でも…急がねぇと…次の犠牲者が出る…」
脳裏を過るのは、志々雄の影。
血と炎と、間に合わなかった過去。
やがて操の睫毛がかすかに震え、目がゆっくりと開く。
剣心の表情が、ほっとほどけるようだ。
「目が覚めたでござるか」
「え…あたし…気絶してた!?」
「あぁ、がっつりな」
斗亜が腕を組んで頷く。
操はキョロキョロと周囲を見回し、そして二人を見た。
「なんで…待ってたの?」
「拙者たちの旅は、常に命のやり取りでござる。誰一人、軽々しく巻き込むわけにはいかぬ」
剣心はわずかに目を伏せ、穏やかな声で言う。
その言葉には、突き放す優しさがあった。