第3章 因縁の残響
一方その頃、斗亜は屋敷の塀を軽く越え庭へ音もなく降り立った。
灯りの揺れる縁側、寝静まった家。
どうやらまだ家主は気づいていないらしい。
倉の中に入ると、同じ金の袋がいくつもあった。
「ここか」
そっと置いて倉を出る。
小さく苦笑し、月明かりの中へ溶け込むように立ち去る。
「あれ…?どっちだっけ?」
帰り道が分からなくなった斗亜の背後から、先ほどの少女と剣心の喧騒が聞こえてくる。
「離せ~!!」
「暴れるなでござる!!」
その声が、妙に温かく感じられた。
「何やってんだか…」
斗亜の口元が、ほんのわずかに緩む。
やがて三人は街道を進み、川に架かる大きな木橋へとさしかかった。
月光に照らされた水面が静かに揺れる。
音一つない橋。
その瞬間までは…。
「居たぞ!!」
「挟み撃ちにしろ!!」
怒号が四方から弾けた。
闇の中から現れる影。
ざっと三十人くらいだ。
橋を囲むように立ち塞がる。
「たく…次から次へと…どうなってやがる…」
斗亜は頭を抱え、大袈裟にため息をつく。
剣心は静かに、目を細めた。
その気配が一瞬で変わる。
少女は一歩前に出て、むしろ楽しそうに男たちを見回す。
「あんたたち剣客でしょ?三分の二は任せていいよね?」
「その必要はない」
斗亜は即答する。
「やれやれ…今は人と関わりたくないというのに…」
剣心も声を低く続ける。
「え?」
少女は、ぽかんと振り返る。
剣心と斗亜は静かに構えた。
「何気取ってんだ、このチビ!!」
「まとめて死にな!!」
男たちの怒号と共に、剣心と斗亜は同時に刀を抜いた。
ヒュッ!!
横薙ぎ。
二人の刀が狙ったのは、人ではない。
橋の床板へ一直線に走った。
シュバッ!!!
ギギギギッ!!!
乾いた悲鳴のような音が、橋全体を駆け抜けた。
一見すれば、ただの空振り。
だが、違う。