第3章 因縁の残響
「なっ!?」
少女の顔色が青から赤へ一気に変わる。
「こ、子供じゃない!!」
頭を抱えて叫ぶ少女をよそに、斗亜は深々とため息をついた。
「もうやめとけ…盗んだこれは返してくる」
少女に背を向けて歩き出す。
「ちょっと待ちなさいよ!!それ!あたしの仕事の報酬!!」
少女の表情が一変する。
「返せぇぇぇっ!!」
少女の両手には貫殺飛苦無が滑り出た。
「(苦無…?)」
剣心は目を細めた。
体に反動をつけて、指先を弾いた。
「貫殺飛苦無!!!」
数本の苦無が一直線に斗亜へと飛ぶ。
斗亜は振り返ることなく、軽く肩を動かそうとした、その時。
ひゅっ――。
剣心が二人の間に入って、足元の外套を翻した。
ばしっばしっばしっ!!
苦無は外套に弾かれ、ことごとく地面へ落ちた。
「なっ!?」
操が目を丸くする。
剣心が手に持っていた外套を見ると苦無でボロボロになっていた。
「あぁぁぁぁ!!!それ、あたしの外套ぉぉぉぉ!!!」
斗亜はゆっくり剣心へ視線を向けた。
「兄貴…」
じとり、と睨む。
「何してんだよ…」
「あ…つい。すまぬでござる」
剣心は気まずそうに頬を掻き、斗亜に頭を下げる。
「謝る相手が違うでしょー!!!」
少女は地団駄を踏みながら叫んだ。
「とりあえず返してくるからな!!」
そう言って斗亜は姿を消した。
「ちょっと待てぇ!!」
「あい待った」
剣心は少女の長い三つ編みの髪を引っ張る。
「いったー!!何すんのよ!?」
「お主がすぐ斗亜を追いかけようとするから、止めているだけでござるよ」
「当たり前でしょ!あたしの金がぁぁぁ!!」
「お主の金ではござらん…」
少女は剣心に絡みつき、もはや半分は締め技のような体勢で暴れ続ける。
「斗亜ぁぁ…早く戻って来てくれでござる~」
涙目で叫ぶ声が、夜空へと吸い込まれていく。