第3章 因縁の残響
斎藤は深いため息をつき、面倒事を振り払うように話を進めた。
「とにかく来い。今から横浜に向かえば、朝一の大阪に間に合う」
その実務的な物言いに、斗亜は即座に眉を寄せ剣心も同じように表情を硬くする。
「いや。拙者たちは東海道を行く」
間を置かず返された答えに、斎藤は鼻で笑った。
「なんだ、文無しか?船代なら政府で…」
「違うっての」
斗亜が一歩前に出る。
その声には、一切の揺らぎが無かった。
「大久保卿暗殺を見れば分かるだろ。志々雄一派は神出鬼没だ」
視線を逸らさず、淡々と続ける。
「こっちは元人斬りが二人居る。船上で急襲される可能性は十分にある。逃げ場のない場所で事が起きれば、無関係な人を巻き込むことになる」
剣心の静かな口調だった。
だがそこには、自分たちが“災厄そのもの”であると理解している者の覚悟があった。
「だから俺たちは、陸の東海道を行くんだよ。つい一週間前に初めて東京に来たのに、もうオサラバだよ」
斎藤は呆れたように肩をすくめる。
「相変わらず甘いな。平和ボケもほどほどにしろ」
わざと挑発するように言う。
「早いとこ“人斬り”に戻った方が身のためだぞ?なんならここで肩慣らしに…」
スッ。
斎藤の手が刀にかかる。
それと同時に、剣心の指が逆刃刀の柄に伸びた。
「ちょい待ちぃ!!!」
バシッ!
斗亜の拳が、容赦なく剣心の後頭部に叩き込まれた。
「あてっ…」
「今はそれどころじゃないっての!!」
緊迫が一瞬で霧散する。
「この件で、誰一人巻き込むつもりはない。だから拙者は、“独り”を選んだ」
「俺も居るけど!?」
斗亜は本気の顔で手を挙げる。