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緋色の誓い

第3章 因縁の残響


唇を噛み締め、涙を必死に堪え、ただ地面を見つめている。

男たちの言葉が、刃のように降り注ぐ。

「使い物にならねぇ」

「食い扶持も減らさねぇと」

「そうすりゃ客も増えるかもしれねぇな」

女将までもが、冷え切った目で桜を見下ろしていた。

胸が軋む。

たった一度、優しく笑ってくれた少女が、こんなにも簡単に命を奪われようとしている。

「すみません!!ちゃんと仕事しますから!!あの剣客さんとも…もう、会いません!!」

桜が叫んだ。

額を地面に擦り付け、何度も何度も頭を下げる。

土に擦れた額から、赤い血が滲む。

「あんたを引き取ったのが、間違いだったよ!」

女将の声は、氷よりも冷たかった。

その言葉を合図に、包丁が一斉に振り下ろされる。

銀の刃。

桜の悲鳴。

空気を裂く音。

時間が止まった。

胸の奥で何かが凍てつき、次の瞬間粉々に砕け散った。

斗亜の足が、勝手に動く。

守ると決めたのに。

一人でも多く救えと言われたのに。

視界の端で、桜の手拭いが舞っていた。

淡い桃色の手拭い。

まるで血の前触れのように、ひらひらと宙を漂う。

喉の奥で、叫びが爆ぜる。

「やめろっ!!!!」

それは、剣客の声ではなかった。

今にも泣き崩れそうな、青年の叫びだった。

何本も刃は止まらない。

その瞬間に斗亜の内側で、何かが燃え上がった。

憎しみ。

絶望。

そして、かつて捨てたはずの修羅の炎。

桜の微笑みが、脳裏でゆっくり剥がれ落ちる。

代わりに広がるのは、温度のない赤。

逃げ場のない色。

斗亜の闇は、ここから始まった。

包丁が振り下ろされる、その刹那。

斗亜の体は、風よりも速く動いていた。

キィィィィン!!!

甲高い音が空気を切り裂く。
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