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緋色の誓い

第3章 因縁の残響


「なんてこった…」

「志々雄は…ああするしかなかった」

大久保が、ゆっくりと言葉を継いだ。

「剣も腕も、頭の回転も…お前たちとほとんど同等。だが常人には理解出来ぬほどの功名心と支配欲を抱えた危険人物だった。影の人斬り役を引き受けたのも、自らの存在と実力をを維新志士の幹部に知らしめるためお前たちのように、仲間や弱き者のためなどという想いは欠片もなかった」

僅かな沈黙が流れる。

「もし志々雄が生きたまま新時代を迎えていれば…事態は、取り返しのつかぬものになっていた」

大久保は、深く目を伏せた。

その背には、維新という名の下で切り捨ててきた命、明治という時代の未来の消えることのない罪が重くのしかかっている。

薫たちは息を詰める。

剣心は静かに拳を握る。

斗亜は、遥か遠い過去を見つめるように道場の壁を見つめた。

その影が、再び京都の夜で蠢いている。

その闇に、また自分が向き合わなければならない。

二人の抜刀斎は、斬り捨てた過去と再び相対する運命にあった。

「戊辰戦争の混乱に乗じて…殺したでござるか」

剣心が静かに斗亜に問いかける。

「あぁ、そうだ…同士の者と俺がやった…死体に油をかけて…」

斗亜の声がわずかに揺れた。

皆が息を呑む。

斗亜の表情は、ほとんど無だった。

その瞳の奥では、焼け落ちる炎、血の匂い、叫び声。

深く濁った闇が、今も消えずに燻っていた。

「全身を焼かれながら…高々と笑い声が響いて…足を踏み外して、坂を転がっていく姿が…今でも焼き付いて離れない」

まるで昨日の出来事のように思い出される記憶だ。

その声には抑揚がなく、低く平坦な響きがある。

弟が一人で背負ってきたものの重さを、今更ながら突き付けられていた。

「幾度となく討伐隊を差し向けた…だが、すべて全滅した」

大久保の沈痛な面持ちで言葉を継ぐ。

「もはや頼れるのは…お前たち兄弟しか居ない。この国を守るため…今一度、京都へ向かってくれ」

その言葉に、道場の空気がさらに重く沈む。

「それって…つまり剣心と斗亜さんに、志々雄真実を暗殺しろってことですか?」

薫の震える声が、静寂を破った。
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