第3章 因縁の残響
「さて、これで全員揃ったな。ここからが本題だ」
その言葉に、斗亜の目が細くなる。
剣心は斗亜を見る。
斗亜の表情は、深い水面のように何も映さない。
「外に馬車を用意してある。来てくれ」
「寝ぼけるな。この一件に巻き込まれたのは、俺一人…」
バキッ!!
乾いた衝撃音が道場を貫いた。
「「「「!!!??」」」」
斗亜の拳が、剣心の頬を正確に打ち抜いた。
剣心の顔が横へ弾かれる。
板の間を踏みしめ、剣心はどうにか踏みとどまる。
薫、弥彦、道場の奥で治療し騒ぎを駆け付けた左之助と恵の全員が息を呑む。
「お、おまっ!!」
左之助の声が途切れる。
斗亜の表情を見た瞬間、言葉を失っていた。
怒りでもない。
冷酷でもない。
「悪いな。昔の約束でもある。人斬り抜刀斎のままじゃさ、兄貴の仲間が悲しむと思って」
斗亜が淡々と口を開いた。
「目、覚めたか?」
ニッと笑う。
その笑みは、どこか寂しく、苦く。
そして優しく懐かしかった。
剣心は殴られた頬を押さえ、ゆっくりと息を吐く。
「あぁ…すまない…」
そして、視線を巡らせて仲間を見る。
「この一件に巻き込まれたのは、拙者一人ではござらん。話は…ここにいる皆で聞く」
薫が小さく安堵の息を漏らす。
斗亜は肩をすくめ、ほっとしたように微笑んだ。
大久保は深く頷き、全員を見渡し口を開く。
「志々雄が…京都で暗躍している」
その名が落ちた瞬間、剣心と斗亜の体が同時に反応した。
斗亜に焼けた記憶が蘇る。
「た、たく…大久保サン。いきなりすぎて、わっかんねーよ。誰だよ、その志々雄ってのは…」
左之助は呆然と口を開く。
「コラ!口を慎まんか!!」
川路の叱責が飛ぶ。