第3章 因縁の残響
板間が裂け、柱が軋む。
「お前…」
斎藤は床を滑りながら体勢を立て直す。
口元が、ゆっくりと歪んだ。
不敵な笑み。
「本当は力量を測るだけのつもりだったがな…気が変わった」
その目が、完全に沈む。
感情の色を消し、純粋な殺意だけを宿して。
「もう…殺す…」
かつて敵味方すべてを震え上がらせた男の本気だった。
剣心もまた、逆刃刀を静かに構え直す。
その佇まいは、もう流浪人ではない。
逆刃刀の刃を返す。
「寝ぼけるな…“もう殺す”のは…俺の方だ」
その言葉が落ちた瞬間、薫の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「いや…剣心…そんなの…剣心じゃない!!」
その姿を見て、斗亜の視線が静かに闘いに向ける。
「斎藤…兄貴…熱くなるのは勝手だが、不毛な闘いはやめろ!」
忠告の言葉が投げかけられた。
このまま進めば何が残るのか、誰よりも理解しているのは斗亜だった。
「「黙ってろ」」
剣心と斎藤の声が重なった。
「全く…」
斗亜が小さく息を吐く。
「似た者同士かよ…」
止まらない。
兄の背に刻まれた過去。
斎藤の刀に凝縮された宿命。
それらが、今まさに小さな道場で激突しようとしている。
斗亜は、静かに目を伏せた。
「始まるな…人斬り抜刀斎と、新選組三番隊組長の…本当の闘いが…」
飛天御剣流と牙突が正面からぶつかる。
轟音が響く。
畳がめくれ、柱が軋み、空気が焼ける。
交錯する二つの殺気は、触れれば魂ごと焼き切れそうなほど熱を帯びていた。
牙突の突進。
飛天御剣流の踏み込み。
衝撃のたびに、神谷道場に悲鳴が上がる。
「誰か…あの二人を止めてぇぇぇぇ!!!」
薫の叫びは涙に溶ける。
弥彦も唇を噛み締め、立っているのがやっとだった。
剣心の呼吸は荒く、肩が激しく上下している。
斎藤の額からも血が流れ、汗と混じって滴る。
余力が尽きかけているのは、誰の目にも明らかだった。
それでも、二人は止まらない。
薫は震える手で、斗亜の袖を掴む。