第3章 因縁の残響
「飛天御剣流――龍槌閃!!!!」
高く、そして速く。
落下の勢い全てを乗せた一撃。
「うおぉ!!出た!!剣心の龍槌閃!!」
弥彦が叫ぶ。
「無理だ」
その熱を断ち切ったのは、斗亜の低い声だった。
「え…?」
振り返った弥彦の目に映った斗亜の表情は、兄を誇る弟のものではなかった。
痛みを知る者の顔だ。
両方の剣を知る者の目。
「あれじゃ…斎藤は倒せない」
拳がぎりっと音を立てる。
その目には剣心と斎藤の剣筋、未来の交錯点が冷静に映っていた。
空気を震わせるほどの速度で、龍槌閃が落ちる。
斎藤の体は、最初からそこに“いない”かのように軌道を外す。
ガッ!!
逆刃刀は虚空を裂いた。
その瞬間斎藤の牙突が、跳躍した剣心の死角を正確に捉える。
突き上げるように、軌道が変わった。
「飛天御剣流は読める。お前の癖は…昔から何一つ変わっちゃいねぇ」
薫が息を呑む。
弥彦の視線が、剣心と斗亜の間を彷徨う。
「兄貴は…優しすぎるんだよ」
斗亜が、ぽつりと呟いた。
それは剣心へ向けた言葉。
同時に自分自身の胸に刻む独白のようでもあった。
着流しの隙間から覗く腹部の古傷が、かすかに疼く。
守るための剣、殺すための剣。
相反する二つの道が、目の前で交差している。
斗亜は呼吸すら忘れて見つめていた。
兄を慕いながらも、同じ修羅を歩んだ者の目で。
誰よりも早く、誰よりも深く理解していた。
「(この戦い…兄貴は苦戦する…)」
道場の空気は凍りついたまま、次の一撃を待つ。
「それで避けたつもりか!?抜刀斎!!」
龍槌閃の着地の瞬間を狙い澄ましたように、斎藤が吼えた。
ギュルッ!!
空気そのものが、捻じ曲がるような音。
斎藤の構えは、すでに次の牙突へと移行している。
「“対空”の牙突…か」
斗亜の低い声。
牙突は一の太刀だけではないことは、昔聞いたことがあった。
相手の動きに応じて派生する、斎藤独自の応用だ。
その一つが対空。