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緋色の誓い

第3章 因縁の残響


重く張り詰めた沈黙だった。

剣心は何も言わず、ただ二人を見据えていた。

その視線には、かつて“抜刀斎”と呼ばれた頃の鋭さが確かに残っている。

沈黙を破ったのは、斎藤だった。

「その様子じゃ、赤末如きに手こずったらしいな」

わざとらしい挑発だ。

だがそれは同時に、幕末を共に駆け抜けた者同士の歪んだ挨拶にも聞こえた。

「お前も随分と鈍ったものだ」

剣心の視線が、すっと冷える。

「そうか…今は藤田五郎と名を変えたのか…」

静かな声が落ちた。

だがその奥には、抜刀斎として生きた男の芯の強さがあった。

視線が、斎藤に向ける。

「新選組三番隊組長・斎藤一…それと…」

剣心の視線が斗亜へと向く。

「拙者の実弟…緋村斗亜…生きていたんだな」

穏やかな口調だ。

けれどその一言一言は、鋼のように揺るがない。

名を呼ばれた瞬間、胸の奥がわずかに熱を帯びた。

「久しぶりだな、兄貴」

斗亜は静かに一歩、前へ出る。

距離を詰めるその動きは、剣客の風格でありながらどこか幼い頃のままだった。

「斗亜…お主、なぜ新選組と行動を共にしている?」

その問いに、道場の空気がざわめく。

薫と弥彦が顔を見合わせる。

「新選組と…剣心の弟さん…?」

「じゃあ、剣心の弟は新選組なのか!?」

「んなわけあるか!」

斗亜は呆れたように肩を落とした。

「あんな陰険な連中の下についたら、一日ももたねぇわ」

わずかに口元を歪めて笑う。

「斎藤と一緒に居るのは、ただの偶然だ」

深く息を吐いた、その瞬間…。

「おっ!!?おまえ!!いつの間に後ろに!!?」

弥彦の悲鳴が上がる前には、斗亜はすでに弥彦の後ろに立っていた。

足音もない。

空気の揺れすら、残っていない。

まるで最初からそこに居たかのように。

弥彦と薫が息を呑む。

その異様な間合いに、かつて人斬りと呼ばれた剣士だけが持つ“何か”を薫と弥彦は無意識に感じ取っていた。
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