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緋色の誓い

第7章 新たな道標



言葉を選ぶように。

迷うように。

「さっき河原にいた家族さ」

それでも、前だけを見つめたまま話し始めた。

剣心は何も挟まない。

静かに耳を傾ける。

「幸太が、あれくらいだった頃を思い出した」

夕陽が斗亜の横顔を優しく照らす。

「歩けるようになったばっかで、ふらふらしてよ」

口元が少しだけ緩んだ。

「目ぇ離した隙に転んで…」

苦笑が漏れる。

「桜に思いっきり怒られた」

その時のことを思い出したのか、小さく肩を揺らした。

「俺が抱き上げたら、さっきまで泣いてたのに急に泣き止んでさ」

少し照れくさそうに笑う。

「抱っこすると、意外と重かったんだよ」

その笑みは一瞬だけだった。

すぐに夕暮れの風へ溶けていく。

「ああいう光景見ても、もう平気だと思ってた」

声が静かになる。

「でも今日は…少し堪えた」

その言葉に飾りはなかった。

弱音でも、愚痴でもない。

ただ、自分の心をそのまま口にしただけだった。

剣心は歩幅を変えず、静かに頷く。

「そうでござるか」

それ以上は言わない。

慰めない。

励まさない。

ただ、その想いを受け止める。

それだけで十分だった。

斗亜は少しだけ視線を落とした。

石畳に伸びる二人の影が、夕陽の中で並んでいる。

「でも」

ぽつりと続ける。

「前みたいに、息が苦しくなるほどじゃなかった」

小さく笑う。

「兄貴たちがいたからだろうな」

言った瞬間、自分で気恥ずかしくなった。

耳まで少し赤くなる。

「だから言わせんな」

ぶっきらぼうに付け足す。

剣心は穏やかに目を細めた。

「拙者は何も聞いておらぬでござる」

「聞いてただろ」

「風が何か申しておっただけでござる」

「絶対ウソだ」

斗亜が軽く肩をぶつける。

剣心も小さく笑った。

そのやり取りを見つけた弥彦が、大きく手を振る。

「おーい!二人とも遅ぇぞ!」

薫も振り返り、笑顔で呼ぶ。

「置いていくわよー!」

斗亜はその声に顔を上げる。
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