第7章 新たな道標
その勢いを利用するように大きく振る。
ひょいっと剣心が斗亜の攻撃をかわす。
パシィィ!!!
「いっっっってぇぇぇ!!!」
見事に竹刀が、斗亜の尻へと決まった。
斗亜は飛び上がるように跳ね、その場で尻を押さえて悶絶する。
弥彦は腹を抱えそうになるのを必死に堪えた。
「ぷっ…っ!いや…無理だ。いい年してガキじゃねぇか…」
苦笑しながら竹刀を方へ担ぐ。
「俺は外で素振りしてくる」
そう言って道場を後にした。
背中では、まだ二人の声が聞こえてくる。
「もう一回だ!!」
「何度やっても結果は同じでござるよ」
「うるせぇ!!」
竹刀が乾いた音を響かせ、斗亜の抗議が朝の道場へ響き渡る。
その声を聞きながら弥彦は庭へ出て、小さく笑った。
「まぁ…こういう朝も、悪くねぇな」
朝日が道場いっぱいに差し込み、竹刀の乾いた音と賑やかな抗議の声が神谷道場にいつもの温かな朝を運んでいた。
「朝餉の支度があるでござるから、この辺で終わりにするでござるよ」
剣心はそう言うと、肩に竹刀を担いで踵を返した。
「えっ、おい!」
斗亜が慌てて声を掛ける。
だが剣心は振り返らない。
「続きはまた今度でござる」
穏やかに手を振り、そのまま道場を後にした。
残された斗亜は、しばらく呆然と立ち尽くしていた。
「……」
どさっ。
力が抜けたように板間へ仰向けに倒れ込む。
「くっそ…」
天井を睨みつける。
右手には、まだ竹刀を握っていた時の痺れが残っていた。
何度挑んでも届かなかった間合い。
何度攻めても止められた一太刀。
額に。
喉元に。
背中に。
竹刀の感触が鮮明によみがえる。
「届かねぇ」
竹刀を胸元へ引き寄せ、ゆっくり握り締める。
天井へ向けて持ち上げると、小さく息を吐いた。
「ちくしょう…」
悔しい。
それなのに、不思議と嫌な負けではなかった。
だからこそ、余計に勝ちたくなる。