第7章 新たな道標
「ぐっ!!」
勢いのまま前へ転がり、斗亜は板間へ手をついた。
「うわ…容赦ねぇ…」
弥彦が思わず顔をしかめる。
だが斗亜は痛みに構うことなく跳ね起きた。
乱れた髪をかき上げ、竹刀を握り直す。
「もう一回!!」
負けを認める気など、これっぽっちもない。
剣心はそんな弟を見つめ、小さく息をつく。
「何度来ても同じでござるよ」
言い終えるより早く、斗亜は再び飛び出していた。
一直線。
迷いなく距離を潰す。
しかし…。
トン。
「え…?」
手首へ軽い衝撃が走った直後…。
カタンッ。
竹刀が斗亜の手から離れ、床に転がっていた。
「まだだ!!」
今度は竹刀を拾おうともせず、体術で飛び込もうとする。
スッ。
竹刀の先が喉元へ、ぴたりと止まる。
「一本、でござるな」
「~~~~~っ!!?」
斗亜の顔が一気に真っ赤になる。
「今のはズルだ!!」
抗議の声が道場中へ響いた。
弥彦は、ぽかんと口を開ける。
「ズルとは何でござるか」
剣心は本気で首をかしげている。
「間合い詰めるのが早すぎだろ!!それで俺の竹刀飛ばしたじゃねぇか!!」
「それも戦略でござろう?」
「むかつく~!!!!」
斗亜は板間を、ばんばんと叩いて抗議する。
さっきまで命がけのような空気だったとは思えない。
弥彦は額へ手を当て、大きくため息をついた。
「さっきまでの真剣勝負は、どこに行ったんだよ…」
斗亜はぶつぶつ文句を言いながら竹刀を拾い上げる。
そして、再び斗亜が構えた。
「もう一回だ!!次は絶対勝つ!!」
剣心は苦笑しながら天井を見上げる。
「朝餉の支度もあるでござる。そろそろ終わりにしたいのでござるが…」
「俺が勝つまでだ!!」
即答だった。
剣心は肩をすくめる。
「では永遠に終わらぬでござるな。付き合ってられん」
「言ったなぁ!!?」
斗亜が勢いよく飛び込む。
「はぁ…」
剣心は呆れたように息を吐き、半歩だけ体をかわす。
空を切る斗亜の竹刀。