第7章 新たな道標
対する斗亜は低く腰を落とし、獣が獲物へ飛びかかる寸前のような構えを取っている。
その瞳は、普段の穏やかなものではなかった。
相手だけを見据える、闘う者の目。
朝日が障子の隙間から板間へ細く差し込む。
一筋の光がわずかに揺れた、その刹那。
ダッ!!
二人の姿が同時に消えた。
「!!」
弥彦の目では追えない。
次に耳へ飛び込んできたのは…。
バシィィッ!!!
乾いた竹刀同士の衝突音が、道場いっぱいに響き渡った。
思わず心臓が跳ね上がる。
「速すぎて…見えねぇ…」
踏み込みも。
竹刀を振る腕も。
体の捌きも。
何一つ視界が追いつかない。
「嘘だろ」
驚きが、そのまま声になって漏れた。
剣心は斗亜の鋭い打ち込みを、紙一重で受け流していく。
床を蹴る音。
竹刀が風を裂く鋭い音。
打ち合う乾いた音。
それらが途切れることなく連なり、まるで一つの音になって耳へ押し寄せてくる。
ほんの一瞬でも気を抜けば終わる。
これは稽古だ。
そう分かっているのに、弥彦には命を懸けた真剣勝負にしか見えなかった。
斗亜が鋭く踏み込む。
一気に剣心の懐へ入り込んだ。
「(入った!!)」
弥彦の胸が高鳴る。
勝負が動いた。
そう思った瞬間…。
バシッ!!
乾いた音が鳴り響く。
斗亜の竹刀が高く宙を舞った。
「あっ…!?」
気づいた時にはもう終わっていた。
剣心の竹刀が、寸分違わず斗亜の喉元へ止まっている。
勝敗は、一瞬だった。
斗亜の目が大きく見開かれる。
悔しさが隠しきれず、その表情いっぱいに滲んだ。
歯を食いしばり、拳を強く握り締める。
「…っ!!も、もう一回だ!!」
息はまだ乱れている。
肩も上下している。
それでも迷うことなく駆け出し、転がった竹刀を拾い上げた。
その様子を見ながら、弥彦は呆れたように頭を掻く。
「朝っぱらから何やってんだよ…この二人は…」
斗亜は竹刀を握り直す。