第3章 因縁の残響
「薫、どうすんだよ!?剣心いねぇのに!」
薫は斎藤、そして斗亜へと視線を移す。
その途中で、ふと違和感に気付いた。
どこか剣心に似た雰囲気に。
輪郭、佇まい、髪色。
そして、斗亜の腰に差された刀。
薫は目を丸くする。
「あの…そちらの方は?」
斗亜は一歩前に出て、丁寧に頭を下げた。
「あ…申し遅れました。俺は緋村と、えーっと…昔から知り合いでして…」
一瞬、斗亜は言葉を慎重に選ぶ。
「斗亜と申します。今回の話を聞いて、少しでも緋村の力になれればと思い…無理を承知で、ついてきました」
声は柔らかく、薫や弥彦を警戒させないための意図的なものだった。
あえて苗字を名乗らなかったのも、まだ状況が見えないからだ。
薫からすれば、正体不明の剣客であってもおかしくない。
それでも彼女の表情は、次第に和らいでいった。
「そう…なんですか。わざわざ、ありがとうございます」
その言葉には、疑念より誠実さが勝っていた。
薫のまっすぐな人柄が、自然と滲み出ている。
「中にどうぞ」
薫に促されて、二人は道場へ足を踏み入れた。
道場の板間に座布団が敷かれ、二人は座った。
戸が閉まると、薫と弥彦の気配が遠のいた。
「お前…」
斎藤が、低く吐き捨てる。
「阿呆だろ」
「はぁ?何でだよ?」
斗亜は眉をひそめ、即座に言い返す。
斎藤はため息をつき、こめかみを軽く押さえた。
「偽名くらい使ったらどうだ」
「あの場で偽名なんて名乗る必要あるか?お前と違って名を捨てて生活してるわけでもないしな」
斗亜は、大きくため息をついて言う。
「今さら隠すことでもねぇし」
斎藤の視線が、鋭くなる。
「あの女子供にだ。もし、抜刀斎がお前のことを話していたら、どうするつもりだ?お前は、元人斬りなんだ」
一瞬、斗亜の思考が止まる。
きょとん、とした顔のまま斎藤を見る。
「あ…」
間の抜けた声が、小さく落ちた。
数拍遅れてから、ようやく意味を理解したように視線が泳ぐ。