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緋色の誓い

第7章 新たな道標



時折混じる苦しそうな咳。

熱に浮かされた者特有の呼吸だった。

斗亜は襖の前まで歩み寄る。

「兄貴?」

一拍置く。

「入るぞ」

返事を待たず、静かに襖を開けた。

部屋の中は薄暗い。

差し込む朝日も弱く、空気がどこか重たい。

布団の中では剣心が体を丸めるように横になっていた。

額には汗が滲み、頬は熱を帯びて赤く染まっている。

乾いた唇から漏れる呼吸は浅い。

目を閉じたまま、小さく咳き込んだ。

斗亜は畳へ膝をつき、そっと額へ手を当てる。

熱い。

思わず眉を寄せた。

熱だけではない。

汗で湿った額。

乾ききった唇。

体が熱と闘っているのが触れただけで分かった。

「症状は?」

静かに問い掛ける。

剣心はゆっくりと瞼を開いた。

焦点が合うまで少し時間が掛かる。

「熱と…咳でござる」

掠れた声だった。

笑おうとしたのか、口元がわずかに動く。

しかし、その直後に咳が込み上げる。

斗亜は静かに頷いた。

「今日は何も考えなくていい。大人しく寝てろ」

剣心は何か返そうとする。

だが言葉より先に咳が出た。

斗亜は布団を肩まで掛け直し、枕を少し持ち上げる。

呼吸がしやすい高さを探しながら、背中へ手を差し入れて姿勢を整えた。

浅かった呼吸が少しだけ落ち着く。

「飯は俺が作る」

その言葉に剣心が目を見開いた。

「斗亜が…?」

「他に誰がいる」

斗亜は短く言い切る。

「俺だって昔、飯炊きはしてたんだ。安心して寝てろ」

そう残して立ち上がる。

襖を閉める前、もう一度だけ剣心を見た。

先ほどより呼吸は穏やかになっている。

まぶたもゆっくり閉じられていった。

その様子を確認し、斗亜は静かに襖を閉めた。

そのまま台所へ向かう。

薪を組む。

火を起こす。

迷いのない手つきだった。

いや、迷わないように体が動いていた。

手を止めれば、不安ばかりが膨らむ。
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