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緋色の誓い

第7章 新たな道標



「止めてねぇだろ!普通に…んぐ!?」

「なんでもないでござる」

剣心は斗亜の口を塞いで肩をすくめる。

恵はもう一度ため息をついた。

「あと数日…そのくらい大人しくしていれば完全に治るわ」

「もう十分元気なんだけどなぁ…」

傷口をさすりながらぼやく斗亜へ、恵はぴしゃりと言う。

「無茶したら、その分だけ治りも遅くなるの」

「ちぇ…」

子どものように口を尖らせる斗亜を見て、恵は苦笑した。

そして、何かを思い出したように口を開く。

「それと、ちゃんと診療所までの道を覚えなさい」

「は?」

斗亜はぽかんと口を開ける。

話題が急に変わり、頭が追いつかない。

恵はくすっと笑った。

「昨日、剣さんから聞いたわ。町で迷ったんですって?」

斗亜はゆっくりと剣心の方を振り向く。

じとっとした視線が、まっすぐ剣心へ突き刺さった。

剣心は少しだけ困ったように笑った。

「あはは…斗亜は昔から方向音痴でござるからな」

斗亜は額へ手を当て、そのまま頭を抱える。

「だから、それ言うなって…」

恵は肩を揺らしながら笑う。

「でも、本当のことでしょ?診療所へ一人で来られても、帰り道が分からなくなったら困るもの」

斗亜は不服そうに立ち上がる。

「帰れる…たぶん」

最後だけ小さくなる声。

その一言に、恵は思わず吹き出した。

「『たぶん』じゃ駄目でしょう」

診察室に笑いが広がる。

剣心も穏やかに微笑みながら恵へ向き直った。

「恵殿、ありがとうでござる」

恵は軽く手を振る。

「どういたしまして。また来週、傷を診せに来てちょうだい」

「来週もかぁ…」

斗亜は肩を落とし、小さくため息をつく。

「これで終わると思ってたのに…」

着物を整えて診察室を出ようとした、その時だった。

「あ、斗亜さん」

恵に呼び止められ、斗亜が振り返る。

「ん?」

恵は優しく微笑む。

「無茶だけはしないこと。傷は順調でも、まだ治りきってないんだから」

斗亜は照れくさそうに頭を掻いた。

「分かってます」

少し間を置いて、照れ隠しのように笑う。

「ありがとうございます、恵さん」

そう言って深く頭を下げる。
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