第7章 新たな道標
現れた傷口へ静かに視線を落とす。
傷はきれいに塞がり始めている。
赤みは残っているものの、腫れも熱も見られない。
恵は傷の周囲を指先でそっと押した。
「痛む?」
「いや、大丈夫だ」
「ふぅん…」
傷をもう一度確認すると、安心したように微笑む。
「順調ね。この調子なら心配ないわ」
診察室の外から剣心の声が聞こえる。
「どうでござるか?」
「問題なしよ」
恵はサラシを巻き直しながら答えた。
「ちゃんと安静にしてたみたいね」
斗亜は肩をすくめる。
「まぁな」
すると、診察室の外から剣心が何気なく言った。
「京都から戻った翌朝には、もう稽古をしておったでござるが」
恵の手がぴたりと止まる。
診察室の空気が一瞬静まり返った。
ゆっくりと振り返る。
その目が、じっと斗亜を見据えた。
「は?…今、何て?」
斗亜の肩がびくりと跳ねる。
視線を泳がせながら乾いた笑みを浮かべた。
「いや、その…兄貴!言うなって!」
恵は腕を組み、じりっと一歩近付く。
「稽古?」
「軽くだ!」
斗亜は慌てて両手を振る。
「本当に軽くだって!竹刀でちょっとやっただけだから!」
「ちょっと?」
恵の笑顔は優しい。
だが、その目だけは笑っていなかった。
「傷が塞がりきってない人が?稽古を?」
斗亜は首をぶんぶん横に振る。
「いや、その…勢いで…」
恵は深いため息をつく。
「軽くても駄目」
そう言うと、サラシの上から傷口を軽く…いや、少しだけ強めに押した。
「いっっっ!」
斗亜が思わず体を跳ねさせる。
「痛ぇ!」
「当然よ」
恵は呆れたように言う。
「まだ完全には治ってないんだから」
斗亜は腹を押さえながら顔をしかめる。
「そんなに押さなくてもいいだろ…」
剣心が診察室の入口から苦笑する。
「拙者も止めたのでござるが」
斗亜は勢いよく振り向いた。