第7章 新たな道標
斗亜は歩きながら左腕をゆっくりと回す。
腹部の傷はほとんど塞がっていたが、まだ薄紅色の傷跡が残っている。
違和感がないか確かめるような仕草だった。
その様子を横目で見ながら、剣心が静かに口を開く。
「痛みはどうでござるか?」
「もうほとんどねぇよ」
斗亜は腕を下ろしながら答えた。
「たまに突っ張るくらいだ」
「そうでござるか」
剣心は小さく頷く。
しばらく歩いたところで、斗亜がふと思い出したように隣を見る。
「そういや兄貴。なんで一緒に来てるんだ?兄貴は昨日診療所に行ってただろ?」
剣心は穏やかに笑う。
「斗亜。小国診療所まで、一人で行けるでござるか?」
その一言で斗亜の足がぴたりと止まった。
数秒考える。
「あ…」
そして頭を掻いた。
「場所、知らねぇな」
剣心は苦笑する。
「だから案内役でござる」
斗亜は照れ隠しに鼻を鳴らした。
「あー…そういうことか」
「そういう所は昔から変わらんでござるな」
「余計なお世話だ」
斗亜は少し不満そうに呟きながらも、素直に剣心の後ろを歩く。
町を抜け、いくつか角を曲がる。
やがて人通りの少ない細い路地へ入ると、小さな木の看板が目に入った。
小国診療所。
剣心が戸を開ける。
からり、と軽い音が響き、薬草の香りがふわりと鼻をくすぐった。
「恵殿」
剣心が声を掛ける。
「はーい」
奥から返事が聞こえ、ほどなくして恵が姿を現した。
白衣の袖を整えながら二人を見る。
「あら。今日は二人一緒なのね」
「斗亜の傷の経過を診てもらいに来たでござる」
剣心が答えると、恵は納得したように頷いた。
「ちょうど良かったわ」
「斗亜さん、診察室へどうぞ」
恵に案内され、斗亜は診察室へ入る。
「そこへ座って」
椅子を示され、斗亜は腰を下ろした。
「じゃあ傷を見せて」
斗亜は着物を少し緩める。
恵は丁寧に手を洗い、水気を拭き取ると、腹に巻かれたサラシをゆっくりと解いていった。