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緋色の誓い

第7章 新たな道標




それでも、不思議と心は晴れていた。

十五年ぶりに交えた兄の剣。

あの日の剣とは違う。

そして、自分の剣もまた、あの日とは違っていた。

互いに歩んできた十五年を確かめ合えた。

それだけで十分だった。

考え事をしながら歩いているうちに、町並みは少しずつ表情を変えていく。

賑やかな声が遠ざかる。

軒を連ねていた家々も途切れ始め、人影もまばらになっていく。

風が運んでくる匂いも、土と草の香りへ変わっていた。

斗亜はそこでようやく顔を上げる。

「ん?」

目の前に広がっていたのは、穏やかに流れる川だった。

どうやら、いつの間にか河川敷まで来てしまったらしい。

思わず苦笑が漏れる。

「歩きすぎたか?」

土手をゆっくりと下り、草の上へ腰を下ろす。

目の前では、陽の光を受けた水面が細かく揺れ、無数の光を散らしていた。

さらさらと流れる水音。

頬を撫でる優しい風。

草が擦れ合う柔らかな音。

町の喧騒とはまるで別世界のような静けさだった。

斗亜は肩の力を抜き、静かに目を閉じる。

その静寂を破るように、楽しげな笑い声が耳へ届いた。

ゆっくりと目を開ける。

少し離れた場所に、一組の若い夫婦がいた。

その間には、小さな子どももいる。

まだ歩き始めたばかりなのだろう。

短い足で懸命に前へ進み、ふらりと体を揺らしながら父親を目指している。

「おいで」

父親が優しく両手を広げる。

母親も笑顔で手を叩いた。

「頑張って」

子どもは小さく笑い、一歩。

また一歩。

足がもつれ、前へ倒れそうになる。

その瞬間、父親が素早く抱き上げた。

高く持ち上げられた子どもが、嬉しそうな声を上げる。

父親も母親も笑う。

幸せそうな笑い声が、穏やかな風に乗って河原へ広がっていった。

斗亜は何も言わず、その光景を見つめる。

自然と目元が緩む。

同時に、胸の奥が静かに締めつけられた。

「(桜…幸太…)」

小さな手。

無邪気な笑顔。

転びそうになりながら必死に歩く姿。

あの日々の記憶が、川面に映る景色と重なるように浮かび上がる。
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