第7章 新たな道標
十五年ぶりに交えた兄との剣。
勝ったのは剣心。
だが、昔とは違う。
あの頃なら、一合すら持たずに勝負は終わっていただろう。
今は最後の最後まで読み合い、ぶつかり合い、わずかな差で決着がついた。
その事実が、斗亜には何より嬉しかった。
剣心は竹刀を壁際へ立て掛ける。
「さて」
穏やかに道場の外へ目を向けた。
「そろそろ朝餉の支度をせねばならんでござるな」
「あっ、そうだった」
薫も思い出したように頷く。
「剣心、私も手伝うわ」
「ありがたいでござる」
二人は竹刀を片付けると、そのまま並んで道場を後にした。
廊下へ足音が遠ざかっていく。
やがて静けさが戻った。
道場に残ったのは斗亜と弥彦だけ。
弥彦はじっと斗亜を見つめる。
その瞳は期待で輝いていた。
斗亜はその視線に気付き、小さく笑う。
「よし、弥彦」
「ん?」
弥彦が顔を上げる。
斗亜は竹刀を握り直した。
「次、お前だ」
弥彦の表情が一気に明るくなる。
「えっ!」
「飛天御剣流教えてくれんのか!?」
「違ぇわ」
即答だった。
弥彦は肩を落とす。
「なんだよぉ…」
斗亜は竹刀を軽く振る。
ヒュッ、と乾いた風切り音が響く。
「せっかくだ」
「兄貴とやった感覚が残ってるうちに、お前にも稽古つけてやる」
弥彦は一瞬嬉しそうな顔をしたあと、すぐに眉をひそめた。
「って、今『ついで』みたいに言わなかったか?」
「気のせいだ」
「絶対違う!」
斗亜は笑いながら竹刀を構える。
「ほら、構えろ」
弥彦も慌てて竹刀を握り、構えを取る。
その姿を見た斗亜は、すぐに首を横へ振った。
「違う」
「え?」
「その構え、さっきの俺と同じ失敗してる」
弥彦が目を丸くする。
「そうなのか?」
「あぁ」
斗亜は自分の竹刀で弥彦の切っ先を軽く押し、構えを少しだけ修正した。