第3章 因縁の残響
斗亜の刀身の厚みのある刃を見て、斎藤の目が細くなる。
「なんだ、その刀は」
斗亜は答えない。
ただ、受けた力を殺し、刃を刀身に滑らせた。
接触が解ける。
その瞬間には、もう位置が変わっている。
間合いが切れる。
次の瞬間に、再び間合いが詰められる。
先ほどまでとは、さらに低くなる。
直線の速度が、刃そのものになる。
斗亜は半身を切る。
視界の端で刃が走る。
斎藤の三太刀目が、ほんのわずかに空を切る。
「……」
斎藤の口元が吊り上がる。
今のは偶然ではない。
“崩された”
四太刀、五太刀と速度が跳ね上がる。
金属音は増えるが、すべて一瞬で離れる。
打ち合いにならない。
互いに“次”を知っている。
だから当たらない。
だから止まらない。
斗亜は斬れる位置に入り続ける。
斗亜からは攻めない。
そこに“いる”という事実だけを突き付ける。
斎藤の呼吸が変わる。
「攻めてこねぇか…」
「測っているのは、お前だけじゃない」
斗亜の声は静かだった。
その言葉と同時に斎藤の構えが変わる。
腰が落ちる。
重心の一点に収束する。
空気が張り詰める。
極限まで圧縮された踏み込み。
「牙突――弐式!!!」
斜め上から突き落とす技だ。
速いなどという言葉では足りない。
視界が追い付かない。
空間そのものが射抜かれる感覚だ。
斗亜の体が沈む。
刀が立つ。
正面から受けない。
角度をずらす。
衝撃が刀から伝わり、腕を貫かれたようだ。
「(くっ…重い…)」
流しきれなくて、後方へ滑る。
足裏で地面を掴む。
体勢を立て直す。
斎藤の目が光る。
ダッ。
斗亜は強く踏み込み高く飛び上がる。
「飛天御剣流――龍槌閃!!!」
上から叩き落される圧に、斎藤の刃が迎え撃つ。
ギィィィィィンッ!!!!
今度は金属音が長い。
路地の空気が震える。
足元の砂埃が跳ねる。
お互いの腕に、衝撃が走る。