第7章 新たな道標
京都から帰って来て翌日。
神谷道場の朝は、少しだけ静かだった。
町では商人の声や荷車の音が響き始めている。
それでもこの道場だけは空気が張り詰め、ゆっくりとした時間が流れていた。
ガラリ。
道場の戸が開く。
最初に入ってきたのは、薫だった。
両手には二振りの竹刀を抱えていた。
その後ろから剣心と斗亜が姿を見せ、弥彦も続いて入ってきた。
薫は道場の中央まで歩くと、まず一本を剣心へ差し出した。
「剣心」
「かたじけない」
剣心は静かに受け取り、握りを確かめるように軽く振る。
続いて、もう一本を斗亜へ差し出した。
「はい、斗亜」
斗亜は竹刀を、ジッと見つめる。
「俺も竹刀か…」
「当然」
薫は腕を組み、ジッと斗亜を見た。
「道場壊されたら困るもの。竹刀でやってもらうわ」
斗亜は肩をすくめながら受け取る。
手に収まった瞬間、重心の違いに眉がわずかに動いた。
「竹刀なんて初めて持つ」
軽く振ってみる。
ヒュッ。
刀とも木刀とも違う、乾いた風切り音。
竹特有のしなりが手へ返ってくる。
「変な感覚だな…」
薫は頷いた。
「すぐ慣れるわよ」
そして、一歩斗亜へ近づく。
「それと…」
斗亜は目をぱちくりさせた。
「なんだ…?」
薫は真剣な表情で人差し指を立てる。
「絶対に道場を壊さないこと」
「……」
「もちろん!柱も壁も床も天井も」
「壊さないって…」
斗亜は苦笑した。
「本当に?」
「本当だって…」
薫は、じっと斗亜を見つめる。
「だから絶対よ?加減して床を踏み抜かない、壁に突っ込まない、柱を折らない、屋根まで飛ばない。飛天御剣流は禁止だからね!!」
斗亜は思わず困ったように笑った。
「そこまでしねぇよ…ただの手合わせだ」
薫は、なおも疑いの目を向ける。
斗亜が額へ手を当てる。