第6章 因縁の終焉
「ただいまでござる」
剣心はそう答え、今度こそ迷いなく歩みを進めた。
その隣に、斗亜が並ぶ。
門をくぐった瞬間、
「お帰りなさい!」
妙の声がもう一度響く。
その言葉は、今度は皆に向けられていた。
斗亜の足が、ほんの一瞬止まる。
だがすぐに左之助に背中を叩かれる。
「ぼーっとしてんなって」
「…悪ぃ」
笑って返す。
だが視線は少しだけ下を向いたまま。
道場の中に入る。
用意された膳。
自然に渡される茶碗。
「ほら斗亜」
薫が箸を差し出す。
弥彦が言う。
「肉多めにしてやるよ」
左之助が笑う。
「その代わり俺の分残しとけ」
妙が手を叩く。
「さあ食べて!」
そこには遠慮も気遣いもなかった。
“最初からそこにいる人間”への扱いだった。
斗亜は席に座る。
しばらく膳を見つめる。
そして、ふっと俯く。
「…ありがとな」
小さな声。
誰に向けたのか分からないほど小さい。
顔を上げる。
いつものように笑う。
「よっしゃ、食うぞ!」
だがその目の端には、
ほんのわずかに光るものがあった。
それを見て、剣心が静かに微笑む。
東京の空は、今日も穏やかに広がっていた。
流浪の果てに辿り着いた場所は、
戦いではなく、恐れでもなく、
当たり前のように「帰っていい」と言ってくれる場所だった。
そしてそこは、
斗亜にとっても同じ“帰る場所”になった。