第6章 因縁の終焉
「腹減ってたんだよな~!」
弥彦も目を輝かせ、二人は待ちきれない様子で道場の方へ駆けていく。
その背中を見送りながら、斗亜は少しだけ歩みを緩めた。
「今更だけど、俺まで世話になって本当にいいのか?」
遠慮と戸惑いの混じった声。
薫は振り返り、すぐに答える。
「あたりまえよ」
迷いのない声だった。
「一緒に闘った仲間ですもの」
少しだけ柔らかく笑う。
「それに、もう“来客”じゃないでしょ?」
「何してんだよ斗亜!早く来いって!」
弥彦が振り向いて叫ぶ。
左之助も笑う。
「飯は大人数の方がうまいんだよ」
妙が門のところで手を振る。
「斗亜さんの分もちゃんとあるわよ!」
その言葉に、斗亜は一瞬だけ目を見開いた。
自分の分が、最初から用意されている。
当たり前のように。
「…薫さん優しいな。ありがとう」
照れくさそうに笑う。
「斗亜~!」
「早く来いよ」
「おう~」
斗亜は駆け出す。
その背中を見送ったあと、剣心はふと立ち止まった。
足元の土を見つめ、静かに息を吐く。
「どうしたの?」
薫が振り返る。
「いや…」
剣心は少し言葉を探す。
「自分の中の抜刀斎を恐れ、皆を危険に巻き込むまいと…三ヶ月、本来の流浪人に戻って、拙者はここを後にしたでござる」
遠くを見るような視線。
「それなのに…何故か当然のように、こうして皆と一緒に戻ってきた。それが不思議な気がして…それに、斗亜まで…」
その前に、薫が一歩近づく。
そして手を伸ばした。
「お帰りなさい」
責めも問いもない、ただの居場所の宣言。
剣心は一瞬目を見開き、そして静かに微笑む。
視線を上げると先に行ったはずの左之助や弥彦、斗亜までもが立ち止まり、こちらを見ていた。
皆、笑っている。
待っている。