第6章 因縁の終焉
「これはな…」
一拍置いて。
「蒼雲・守(まもり)だ。お前が生きて、誰かを守るための刀だ」
「生きて…守る」
「斬らねぇ覚悟を、刀に押し付けるな」
新堂の声は低い。
「殺さねぇ理由を、刀に背負わせるな。生きるのも、守るのも、選ぶのはお前だ」
刀は決めない。
選ぶのは、人だ。
「…怖いな」
「当たり前だ」
新堂は鼻で笑う。
「怖いまま、生きろ。怖いまま、守れ」
沈黙。
炭の音だけが流れる。
「生きろ。そして守っていけ」
斗亜は、深く頷いた。
「…ああ、ありがとう」
蒼雲・守は、まだ語らない。
だが、確かな重さがある。
腰に差す。
心地いい。
戸口で、斗亜は一度だけ振り返る。
新堂は炉の前に座り、背中越しに言った。
「また必要になったら来い」
「これが折れた時、また来るよ」
「…縁起でもねぇ」
「でもさ」
斗亜は、少しだけ笑った。
「折れるまで使うってことだろ」
返事はなかった。
ただ、新堂が低く呟いた。
「…生きて、守れ」
「おう」
斗亜は新堂に笑みを向ける。
「お前まだフラフラしてんのか?どっかに腰を落ち着かせるつもりはないのか?」
「あー…しばらく東京の神谷道場に世話になろうと思ってる」
斗亜の言葉に新堂は言葉を失った。
「やっと居場所見つけたんだな」
「まぁ…いつまで居るか分からんけどな」
「そうか…」
「またな!まさ!」
「おう」
斗亜は戸を開け、夜へ踏み出す。
背後で、炉の火がぱちりと弾けた。
振り返らず、歩き出す。
腰の蒼雲・守は、静かにそこにあった。
翌朝。
「色々とお世話になりました」
剣心が深く頭を下げる。
「うむ、元気での」
翁は腕を組み、満足そうに頷いた。
「また京都に来てね。そしたら今度はいっぱい遊ぼうね」
操は目に大粒の涙を溜めながら、必死に笑顔を作る。
「うん。操ちゃんも東京に遊びにきてね」
薫が優しく返す。