• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

緋色の誓い

第6章 因縁の終焉


斗亜は意味がよく分からないまま、つられて笑った。

「なんだかわからねぇけど、いい空気だな」

そう思いながら、斗亜は少しだけ輪の外を見る。

平和な時間。

それが当たり前に流れていることが、何よりも尊かった。

その後、一行はそのまま一緒には帰らなかった。

斗亜は「ちょっと寄る所がある」とだけ告げ、別行動を取る。



斗亜は工房の戸の前に立ち、ゆっくりと息を整えた。

胸の奥に溜まった空気を、静かに吐き出す。

叩こうとした、その直前。

内側から、低く落ち着いた声が響いた。

「遅かったじゃねぇか…」

ガラッ。

戸が引かれる。

現れた新堂正隆は、腕を組んだまま斗亜を一瞥した。

「生きてたな」

「あぁ」

短く答える。

「生きて帰ってくるって約束、守ったぞ」

ほんの一瞬。

新堂の視線が、揺れた。

「…入れ」

それだけ言って、背を向ける。

工房の中は、何一つ変わっていない。

炭の匂い、鉄の気配、張り詰めた静けさ。

だが斗亜には、もう同じ場所には感じられなかった。

斗亜は腰の下げ緒を外し、蒼雲を新堂の前に差し出す。

「この刀で良かったよ」

新堂は無言で受け取り、鞘から刃を引き抜いた。

す、と。

澄んだ音が、空気を切る。

刀身を目で追い、角度を変え、反りと重心、わずかな癖まで確かめる。

しばらくして、刃を鞘に戻す。

新堂は、小さく息を吐いた。

「…人は斬ってねぇな」

「あぁ」

「刃の荒れ方が違う…」

蒼雲を布の上に置き、新堂は斗亜を見る。

「過去の因縁に…ちゃんと向き合ったらしいな」

斗亜は、わずかに目を伏せた。

「全部じゃねぇ」

「だろうな」

新堂は鼻で笑う。

「そんなもん、一月そこらで割り切れるなら、人間やめてるっつーの」

斗亜は、蒼雲から視線を外す。
/ 284ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp