第6章 因縁の終焉
そこには、いつもと変わらぬ佇まいの比古が立っていた。
「何をそんなに驚いてやがる」
比古は腕を組み、どこか面白そうに鼻で笑う。
斗亜は一瞬言葉に詰まり、苦笑する。
「俺…妻と約束したんです。人を殺めるのはやめて、新時代に生きろって。だから俺は…これからも人斬りには戻らず、新時代で生きてみようと思います」
絞り出すような、それでいて迷いのない声だった。
比古はしばらく何も言わず斗亜を見つめ、やがてフッと笑う。
外套を翻し、墓前から一歩離れながら言う。
「用が済んだなら、さっさと帰んな」
それだけだった。
だが、斗亜には十分すぎる答えだった。
「はい…」
斗亜は深く頭を下げ、比古の背中を見送る。
去っていく背中は、相変わらず大きく、そして頼もしかった。
「それじゃあ、また来るよ。桜、幸太」
刀と桶を手に取り、斗亜は剣心の元へ戻る。
二人は何も言わず、並んで歩き出した。
葵屋への帰り道。
角を曲がった先で、見慣れた顔ぶれが集まっているのが目に入る。
薫、恵、左之助、弥彦。
それぞれが思い思いに話しながら歩いていた。
「おろ?」
最初に気付いたのは左之助だった。
「剣心!斗亜!お前たちの方こそ、朝早くからどこ出かけてたんだよ」
溜め息まじりに言いながらも、その表情はどこか安心したようだった。
剣心と斗亜は顔を見合わせ、同時に小さく笑う。
「俺は妻と息子の墓参りだ」
斗亜はそう言って、四人に向かって微笑んだ。
その笑顔には、悲しみよりも穏やかな決意がにじんでいる。
「おろ?ああ拙者はこのとおり、ちょっと知人の墓に参って…」
剣心がいつもの調子で言いかけた、その瞬間。
「剣心、今“おろ”って」
薫が思わず指摘する。
「おろ?」
剣心はきょとんとした顔で首を傾げる。
その反応があまりに自然で、次の瞬間には皆が一斉に声を上げた。
「出た!」
「久々だなそれ!」
「やっと素が出てきたじゃねぇか!」
薫と恵、左之助と弥彦が口々に喜び合う。