第6章 因縁の終焉
「何が正しいかは、時代時代が後世の歴史に書き残す。拙者達に出来るのは、その中で自分が正しいと思うことを信じて…闘っていくことのみでござる」
「ただ…」
斗亜が続ける。
「志々雄の言ってた。強ければ生き、弱ければ死ぬという“弱肉強食”の時代だけは…絶対に間違っている」
剣心は何も言わず、同じ空を見上げた。
雲ひとつない、透き通るような青空が広がっている。
戦も陰謀も、すべてが嘘のように静かな空だった。
「今日も平和だ」
斗亜はそう言って、ニッと笑った。
その笑顔は、多くを失い、それでも生きることを選んだ者の、確かな笑みだった。
新・葵屋が出来て一週間が過ぎた頃。
朝の京都はまだ人通りもまばらで、石畳の上に落ちる陽の光がやわらかく伸びていた。
剣心と斗亜は、桶に菊の花を入れ、それぞれの歩調で町を歩いていた。
桶の中で揺れる白い花弁が、静かに水音を立てる。
「十年か…少し町並も変わったな…」
懐かしむように剣心が呟く。
瓦屋根の連なりの合間に、新しい店構えや見慣れぬ看板が増えている。
「そりゃ十年経てば町も変わるだろ。今は皆、平和の世に生きてるんだからな」
斗亜はそう言って、少し誇らしげに笑う。
血と炎に染まった過去を知る者だからこそ、その言葉は重かった。
「そうだな…」
剣心は短く頷き、再び歩き出す。
二人の影が、同じ方向へと伸びていく。
やがて町外れの静かな一角に辿り着き、二人は足を止めた。
斗亜は桶を下ろし、花を取り出して墓前に供える。
「桜…幸太…ありがとな…お前たちのおかげだよ」
墓石に手を添え、静かに頭を下げる。
言葉は少なく、それでも想いは十分すぎるほど詰まっていた。
しばらくして、斗亜は小さく息を吐き、微笑みながら立ち上がる。
「それがお前の妻と息子の墓か?」
低く、よく知る声が背後からかかる。
「し…師匠!?」
斗亜は思わず振り返り、目を見開く。