第6章 因縁の終焉
「…せやけど、それを聞いた方治は、完全に絶望してもうた。志々雄様の思想も闘いも、歴史から抹消される。それなら生き延びる意味はないと…自ら死を選びよった」
誰も言葉を発せなかった。
それぞれが、方治という男の姿を思い浮かべていた。
張はその後、由美の最期、そして姿を消した宗次郎の話を簡潔に語り終えると、席を立つ。
「ほな、わいはこれで」
白べこの戸口へ向かう張を、剣心が呼び止めた。
「張、牢で自害した志々雄の忠臣…あの男の本名を聞かせてくれぬか」
張は少し考え、記憶をたどるように天井を見上げる。
「確か…“佐渡島方治”やな」
「そうか…」
剣心は深く息を吸い、静かに言葉を紡ぐ。
「憂国の士・佐渡島方治の霊前に伝えてくれ。志々雄真実と駒方由美、そして集いし十本刀例え歴史に残ることがなくとも。拙者の胸の内に、しかと留め置くと…」
「大敵の男にそう言われても。あの男が嬉しがるとは思えへんが…」
張は肩をすくめた。
「…わかった。任しとき」
と短く答えた。
「あ、張。あいつは…えっと…花咲っていう男は…知らないか?」
斗亜が思い出したように声をかける。
「花咲…?あぁ、あんたに恨みがあるっちゅう、いけすかん男やな。あいつは…行方不明や。死体も見つからんかった」
「そうか…ありがとな…」
斗亜は目を伏せ、静かに礼を言う。
「きっとどこかで生きとる。あの男に殺されんなや?」
「あぁ…」
張はそう言って、斗亜の肩をぽんと叩き、白べこを後にした。
静寂が戻る。
「なぁ剣心…斗亜」
弥彦が、不安を隠せない声で口を開く。
「俺たちは…勝ったんだよな。正しかったのは、俺たちの方だよな?」
剣心はすぐには答えず、しばらく張の背中を見ていた。
「勝った者が正しいというなら。それは志々雄真実と同じでござるよ」
穏やかだが、揺るぎない声音だった。