第6章 因縁の終焉
「それより安慈はどうなった?」
左之助が顔を上げる。
「あいつが政府の裏取り引きに応じるわけは絶対にねぇはずだが」
「“明王”の安慈はな。功労者の嘆願もあって極刑は免れた。せやけど本人の意思で刑に服すことを選びよった」
張の声は、さっきまでよりも少し低い。
「懲役二十五年…今は北海道の仮設集治監や」
「二十五年か…長いな…」
左之助はそう呟き、拳を握る。
悔しさとも、惜しさともつかない感情が滲んでいた。
「…そういえば、あの男は?」
斗亜が静かに問う。
「志々雄の闘いに立ち会った…恐らく十本刀一番の忠臣…」
一瞬、張は言葉を止める。
湯飲みを口元に運び、ゆっくりと茶をすする。
「…あいつは、死によった」
その一言が落ちた瞬間、剣心、斗亜、左之助の三人は同時に息を呑んだ。
笑い声も、皿の音も止まり、白べこの一階は、静まり返った。
それぞれの闘いは終わった。
だが、その代償と結末は、決して軽いものではなかった。
「“百識”の方治はもうこの世にはおらへんのや」
張のその一言は、場に残っていた温もりを一瞬で冷やした。
箸を止め、誰もが息を潜める。
「あの男が…死んだ…?」
斗亜の声は、低く掠れていた。
「そや、最後の闘いの後、安慈に一命を救われた方治は警察に出頭した。“弱肉強食”の政策の正当性を訴え、志々雄様の汚名を少しでもそそごうと裁判を待っとったんや」
張は淡々と語る。
だが、その言葉の裏にあるものの重さは、誰の耳にも痛いほど伝わってきた。
「けどな結局、裁判はおろか、方治には公に語る機会ひとつ与えられへんかった」
「そうか…」
剣心は静かに呟く。
「志々雄は幕末においても明治においても、維新政府側の“影”政府にとって決して表沙汰になってはならぬ存在でござったか…」
張は小さく頷く。
「政府はな。志々雄のことは忘れ、明治政府に臣従すれば一生の安泰を保証するとえらい好条件を方治に突きつけたらしい」
一瞬、張は視線を落とす。