第6章 因縁の終焉
「ほとんどはわいと一緒や。その常人離れした能力を買われて裏取り引き。恩赦の後、政府の支配下に組み込まれて。適材適所の任に就きよったわ」
「ほぅ…」
斗亜は目を細めながら、張の言葉を噛みしめる。
志々雄の遺した傷跡は深い。
だが同時に、それぞれの行き先もまた、少しずつ定まり始めていた。
戦いは終わった。
だが、生き残った者たちの“その後”は、まだ続いていく。
「“飛翔”の蝙也はな、その飛空能力を買われて亜細亜大陸の情勢を空から探る陸軍斥候や空を制する奴は情報を制するってわけやな」
張はそう言いながら、箸で茶碗の縁を軽く叩く。
どこか誇らしげでもあり、皮肉も混じった声音だった。
「“派軍(甲)”の才槌は元々、人を話術で丸め込む天才や。外務省の裏役人として、表に出せん交渉ごとを任されとる。国と国の腹の探り合いってやつやな」
「そんで“派軍(乙)”の不二は北海道や平時は開拓、有事には北方最前線の守り。屯田兵として骨を埋める覚悟を決めたらしいわ」
淡々と語られるそれぞれの行き先。
だがそこには、確かに“生きる場所”が与えられていた。
「あのオカマは?」
操が遠慮なく口を挟む。
「私達と闘った…確か、鎌足って名の」
操は少し言いづらそうに、けれど気になっていたのだろう、問いを重ねる。
「“大鎌”の鎌足はな…その容姿を活かして女子留学生に化けて先進国を探る諜報員…」
張は一度言葉を切った。
「…なる予定や」
と付け足した。
「「予定?」」
薫と操は同時に首を傾げる。
「あぁ。あんたにやられた傷の治りがよくないんや。傷そのものは命に関わるほどやなかったんやけどな。病は気から言うやろ…あいつ、志々雄様の死を知ってからえらい落ち込んでもうて…」
張は味噌汁を一口すすり、少し視線を落とす。
「病院でな“自分は何のために生きとったんやろ”って毎日のように泣いとるらしい」
場に、しんとした静けさが落ちた。
「生きてさえいれば、そのうちええこともあるってもんや」
張はそう言って、いつものように軽く笑う。
「その通りだな…」
斗亜は小さく頷き、その言葉を噛みしめるように呟いた。