第6章 因縁の終焉
トントン…。
ゆっくりとした足音が階段を下りていく。
剣心は手すりに軽く手を添えながら、一段一段を確かめるように歩いていた。
「剣心!もう起き上がっていいの!?」
台所から顔を出した薫が、驚いたように声を上げる。
「あぁ、大丈夫。もう癒えたでござるよ」
穏やかに答えながら、剣心は微笑む。
「第一、毎日毎日こう一階で騒がれちゃ。おちおち寝てもいられないし。斗亜はこんなに騒がしくても寝てるでござるけど…」
「斗亜さんは…まだ起き上がれないの?」
薫の声には、隠しきれない心配が滲んでいた。
「いや…多分…精神的な問題でござろう」
「精神的な…?」
薫が不安そうに問い返す。
剣心は一瞬だけ視線を伏せ、そして優しく微笑んだ。
その笑顔の意味を、薫はまだ理解できず、首を傾げる。
「恵殿、傷の手当てありがとうでござる」
剣心が振り返り、恵に礼を言う。
「どう致しまして。でもまだ油断は禁物ですよ」
恵は腕を組み、医者としての顔で言い添える。
恵さんは、兄貴の重症を聞いて、すぐに駆けつけたらしい。
あの日、陽が沈み、月が東の空に昇る頃。
俺たちはようやく帰ってきた。
兄貴も、俺も、瀕死の重傷だった。
薫さんが何度呼びかけても、俺たちは目を醒まさなかった。
あの闘いは終わった。
だが、心に刻まれた傷は、まだ癒えてはいなかった。
それでも、俺たちは生きている。
生きて、前へ進むために。
「冴殿、すまぬが茶を一杯頂けぬでござるか」
「あい只今」
冴はそう返事をすると、慣れた手つきで急須を手に取る。
その様子を見て、薫はどこか誇らしげに、そして満足そうに微笑んだ。
「おー緋村君!やっと起きてきよったか!それではさっそく君も一曲!!」
すっかり出来上がっている翁が、剣心の肩に絡みついてくる。
杯を手に、顔は真っ赤だ。