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緋色の誓い

第6章 因縁の終焉


その背中は、最後まで振り返ることはなかった。

斗亜、剣心、左之助、そして蒼紫は、辛うじて外へ脱出した。

燃え盛る志々雄のアジトを、しばらく無言で見つめる。

赤く染まる夜空。

崩れ落ちる建物。

熱風が頬を叩く。

「(やっと…終わった…)」

斗亜の意識は、緊張の糸が切れ朦朧としていた。

本当にこれでよかったのか。

志々雄は、かつてのように再び焼かれ、今度こそ死んだのか。

問いは浮かぶが、答えを考える力は残っていなかった。

仲間が無事でいることを確認した、その瞬間。

張り詰めていた糸が切れるように、斗亜の体が崩れ落ちる。

ドサッ。

「斗亜!?おい!しっかりしろ!!」

左之助の声が、遠くから聞こえた気がした。

それを最後に、斗亜の意識は深い闇へと沈んでいった。



志々雄との死闘から、早一ヶ月が過ぎた。

その間に梅雨は去り、季節は初夏を迎えていた。

斗亜は、久しぶりに夢を見ていた。

それは懐かしすぎて、胸が締めつけられる夢だった。

青い空。

強すぎない日差し。

風に揺れる木々の葉擦れの音。

見慣れた縁側に、桜が座っている。

淡い桜色の着物姿で、腕の中には幸太。

小さな体を揺らしながら、幸太は「くふっ」と声にならない笑いをこぼした。

その音を聞いた瞬間、斗亜の胸が、きゅっと縮んだ。

「桜…」

声をかけると、桜は少し困ったように、でも懐かしい笑みを浮かべる。

「そんな顔しないで…」

幸太は斗亜に気づいたのか、ぱちぱちと手足を動かしながら、声をあげて笑った。

くふ、くふ、と喉の奥で転がるような、よく知っている笑い声。

斗亜は、思わず膝をついた。

触れれば壊れてしまいそうで、それでも、触れたくて仕方がなかった。

「相変わらず、よく笑うな」

そう呟くと、桜が小さく頷く。

「あなたが約束を守ったからよ」

斗亜は、唇を噛みしめる。
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