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緋色の誓い

第3章 因縁の残響


斗亜を見る視線が、まずは刀、次に顔へ向く。

わずかに口の端が上がる。

「ほぅ…お前が緋村抜刀斎の弟か…」

「っ!?」

名ではなく、立場で呼ばれた。

斗亜の瞳が、わずかに鋭くなる。

いつの間にか、東京の喧騒が遠く感じられた。

「俺を…知っているのか?」

男は口の端を上げて笑った。

「知らねぇ方がおかしい。その顔立ち、その緋色の髪…あいつによく似ている」

斗亜は改めて男を見る。

警官の制服、佇まいは警官というよりも剣客のようだ。

足の置き方、重心、視線の鋭さ。

記憶の奥が、微かに反応する。

昔の京都を思い出す。

ほんの一瞬、視界の端に捉えただけの男。

あの時の気配と、同じだと思った。

「お前…名は?」

「斎藤一」

斗亜の問いに、迷わず言った。

新選組で、維新後も剣を捨てなかった男。

斗亜は、ほんのわずかに笑う。

「なるほどな。壬生の狼ってわけか」

東京の空気が、また動き始める。

人々は二人を避けて通る。

斎藤は周囲を一瞥し、顎で路地を示した。

「ここは騒がしい。少し話がある」

斗亜は一瞬だけ、町の賑わいに視線を戻す。

さっきまで目を輝かせていた場所。

そして、再び斎藤を見る。

「案内しろ」

斎藤が路地に歩き出すと、斗亜も歩き出す。

一歩、また一歩進むたびに喧騒が静かになっていった。

「お前の力量が見たい」

歩きながら斎藤は、斗亜に言った。

声色は低く、事務的のようだった。

「力量…?何のためだ?」

斗亜は視線を斎藤の背中に向ける。

「抜刀斎の弟がどれほどの力で、どれほどの力を持っているのか」

一拍置く。

「知っておきたいだけさ」

「場所を選べ…」

斗亜は短く息を吐いた。

その返答に斎藤の口角がわずかに吊り上がる。

「話が早い」

路地に入る。

光が細くなっていく。

倉と倉に挟まれた最奥に着いた。
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