第3章 因縁の残響
数日後。
昼前に、斗亜は東京の町に足を踏み入れた。
視界が一気に開ける。
広い道に石畳、立ち並ぶ店の多さ。
人の多さにも驚いた。
荷を運ぶ掛け声が飛び交い、呼び込みの声が重なる。
車輪が石畳を打つ乾いた音が、絶え間なく響く。
町全体がうねっている。
生き物のように、脈が打っているようだ。
斗亜は立ち止まった。
「ここが東京か~」
声が、子供のように素直だった。
京都とは違う賑わいだった。
規模が違う。
熱気が違う。
斗亜は、ゆっくりと歩き出す。
あちこち見て回る。
「兄ちゃん、買って行くかい?」
声がかけられ、ほんの少しだけ驚く。
「見てるだけだって」
斗亜は笑いながら店主に答えた。
斗亜の視線は、きらきらとしていた。
歩きながら、気になる物があると何度も立ち止まる。
通りの人の流れを眺める。
「東京って、面白いな~」
ぽつりと漏れる。
旅の中で、久しぶりに“興味”が勝っていた。
その時だった。
「っ!?」
人々の流れの中、斗亜を見つめるような違和感を感じた。
斗亜は、その場に立ち止まる。
人の流れが、わずかに歪む。
騒がしいはずの音の奥に、異質な静けさがある。
自然と視線が細くなる。
楽しかった町の色が、一瞬で引く。
「……」
強い気配を感じ取った。
殺気ではない、押し付けるような圧だ。
刃物のような、まっすぐな存在感を感じる。
斗亜がゆっくりと視線を向けると、人の流れがわずかに割れている。
一人の警察だった。
だけど腰に下げているのは、サーベルではない。
日本刀だ。
その一点だけが、異様に目立つ。
男が歩いてくる。
止まらない。
まっすぐ斗亜の方へ来る。
人混みの中、二人の間だけが静かになる。
やがて警官は、斗亜の前で立ち止まった。