第6章 因縁の終焉
「確か…方治と言ったな」
蒼紫は静かに口を開く。
怒りも動揺もなく、ただ事実を淡々と述べる声だった。
「事実は事実だ。負け犬と呼ばれれば否定はしないだが、その負け犬との闘いを避けずに応じたがゆえに抜刀斎は本来負う必要のなかった傷を負い、体力を消耗した。その事実も…また否定は出来ない」
「つまり…その分をお前が補うってことか?」
志々雄は口角を吊り上げ、愉快そうに蒼紫を見下ろす。
「くだらん!!抜刀斎たちが万全であったとしても志々雄様との力の差は歴然!!結果が変わるはずもない!!」
「ま、いいじゃねぇか方治」
志々雄は軽く手を上げ、方治を制する。
「久々に俺自ら闘ったついでだ。この際、誰が最強か後くされなくハッキリさせようぜ。とりあえず緋村共を斃した俺が“今”は最強ってことになるが…どうだ?御庭番衆の墓前に華として添えてやるか?」
そう言いながら、志々雄は袖の内から火薬仕込みの手袋を取り出し、ゆっくりと嵌める。
革がきしむ音が、闘場に嫌に大きく響いた。
そして志々雄真実と四乃森蒼紫の闘いが、静かに始まろうとしていた。
その一方で倒れ伏す斗亜の傍らに、ふっと影が揺らめく。
乳飲み子を抱いた一人の女性が、幻のように現れた。
――あなた…早く起きて…――
閉じた瞼の裏に、斗亜ははっきりとその姿を見る。
愛した、いや…今でも愛している妻、桜の姿だった。
そして腕の中で眠る幼い幸太。
「(桜…幸太…あぁ…迎えに来てくれたのか?)」
――いいえ…あなたはまだ、この世で生きてください――
「(…まだ、死ぬことは許してくれないか…)」
――約束したでしょう…新時代を生きてくださいって。そして…あなたの大切な仲間を助けてあげてください。まだ…死なないでください――
「ッ…!!」
斗亜の指先が、微かに動く。
拳に力が戻り、床を掴む。
同時に、少し離れた場所で剣心の体も揺れた。
ゆっくりと。
まるで重力に逆らうかのように、二人は立ち上がる。