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緋色の誓い

第5章 因縁の余燼


ダッ!!!

キィィィィン!!!

床を蹴り、一瞬で間合いを詰める。

斗亜は反射的に蒼雲を構え、真正面から受け止めた。

火花が散る。

金属音が、耳を裂く。

だが男は止まらない。

左右、上下、間合いを自在に変え、執拗に追い立てる。

「斗亜…どうしちまったんだ…」

左之助の声に、焦りが滲む。

「受け止めるだけだ…!」

「大切な人を殺された相手ゆえ…酷く動揺していたでござるからな…」

剣心も、歯を噛み締める。

キィィィィン!!!

再び刃がぶつかる。

「お前さえ居なければ…」

男の声が、低く響いた。

「桜は…死なないで済んだものを…」

その瞬間、斗亜の視界が揺らぐ。

胸の奥を、鷲掴みにされたような衝撃。

「…ッ」

ほんの一瞬。

だが確かに、動きが止まった。

「死ね!!」

男は、その隙を逃さない。

連撃が叩き込まれ、斗亜は防ぎ切れずに受ける。

肩口に、鈍い衝撃。

肋に、焼けるような痛み。

宙に舞う感覚。

血でも炎でもない。

脳裏に浮かんだのは、笑顔だった。

柔らかく微笑う桜。

小さな手で、指を握ってきた幸太。

ドサッ。

床に叩きつけられ、肺の空気が一気に抜けた。

視界が白く弾ける。

「「斗亜!!!!」」

剣心と左之助の声が遠くなる。

男の足音が近づいてくる。

刀を引きずる音が、やけに重い。

「もう終わりか?人斬りなのに…あっけないな」

顔を寄せ、嘲るように囁く。

「お前が居なければ…俺の家族も死なずに済んだのによ~。桜はな…死んで当然の奴だったんだよ~…仕事も何一つ出来なかったしな」

刃が振り上げられる。

「「斗亜!!」」

剣心と左之助の叫び声が響く。

「死ね…緋村斗亜」

その声の奥で、別の音がした。

――くすり、と。

柔らかな笑い声。

血の匂いの中に、春の匂いが混じる。

視界の端に、着物の裾が揺れた。

桜だった。
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