第5章 因縁の余燼
「もしそれがまだ手遅れでなくば、今からではもうやり直しは効かぬのか?」
その言葉が、宗次郎の心を直撃した。
「…ッ!!」
宗次郎は頭を抱え、声にならない悲鳴を上げる。
呼吸が乱れ、体が震える。
「宗次郎が…壊れた…」
由美の顔から血の気が引く。
「邪魔だ…緋村さん…あなたの存在は邪魔なんだ…!」
宗次郎は歯を食いしばり、叫ぶ。
「あなたと闘っていると僕はおかしくなってくる!何が正しいかなんてもういい!次の一撃で今度こそあなたを殺す!!」
苦痛に歪んだ顔で、強く言い放つ。
「邪魔だな…」
宗次郎は周囲の障害物を切り裂き、静かに鞘へ納める。
「いきます。覚悟はいいですね」
抜刀術の構え。
「抜刀術…やはりそれで決着をつけるか…」
「僕が唯一名前をつけた技“瞬天殺”その名の通り一瞬で死ねますから、痛みは感じません」
「…“縮地”の突進から“天剣”の抜刀術に繋げる連続技か…確かに決まれば“瞬天殺”だな」
一拍、置いて。
「…だが決めることが出来るのか?その乱れきった今の心で」
「成程…全てお見通しっていう訳ですか。大した余裕ですね」
斗亜は目を伏せ、息を整える。
「人の心配より自分の心配をしたらどうです?緋村さん。先読みしたところで絶対に反応は出来ませんよ。“瞬天殺”の速さにはね」
「そうか…ならばこれでどうだ」
剣心は逆刃刀を、静かに鞘へ納める。
「…兄貴…また奥義を出すのか…」
「本気ですね…」
「拙者は常に本気でござるよ。それでなくては、この口から出た言葉も相手に本気とは思ってもらえぬ」
――もしそれがまだ手遅れでなくば、今からではもうやり直しは効かぬのか?――
宗次郎の脳裏に、その言葉が蘇る。
「わかりました…僕も慢心を捨てて本気でいきます」
空気が、張り詰める。
ヒュンッ。
宗次郎の姿が完全に消える。
「これが“縮地”…」
「速過ぎてマジで見えねぇ!!」
斗亜、左之助、由美は言葉を失う。
剣心は前へ走り出す。