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緋色の誓い

第5章 因縁の余燼


その背中に、迷いはもう見えない。

「“縮地”の一歩手前…行きますよ」

ドッ。

宗次郎の姿が、剣心の正面から消える。

床、壁、天井に一瞬遅れて衝撃が走り、空間そのものが裂けたように歪む。

横だけではない。

上下を絡めた、全方位からの殺意。

「これじゃあ逃げ場はないな…」

斗亜が息を呑んだ、その刹那。

「所詮この世は弱肉強食…強ければ生き、弱ければ死ぬ」

ガッ!!

背後。

宗次郎の刃が走るが、逆刃刀が間一髪で受け止める。

金属音が炸裂し、火花が散った。

「不殺とか弱い者を守るとか、あなたは言うけれど…それは間違いなんだ。何故なら」

ガッ!!

再び背後。

剣心は体を捻り、刃を弾く。

「あの時あなたは僕を守ってくれなかったじゃないですか」

刃を交えたまま、宗次郎は淡々と問いかける。

「あなたが正しいと言うなら、なんで守ってくれなかったんです?」

剣心の口がわずかに開く。

だが、言葉が出ない。

バチッ。

互いの刀が弾かれ、距離が開く。

宗次郎は止まらない。

空間を裂くように、再び動く。

「“あの時守ってくれなかった”…どういうことだ?」

斗亜は眉をひそめる。

「なんか言ってること支離滅裂じゃねぇか」

左之助の声にも、戸惑いが滲む。

「やっぱりおかしい…いつもの坊やと完全に違っている…」

由美が険しい表情で呟く。

「(まさか…兄貴が人斬りに戻るんじゃねぇだろうな…)」

斗亜の額に、冷たい汗が一筋流れる。

「あの時誰も僕を守ってくれなかった…守ってくれたのは志々雄さんが教えてくれた真実と、ただ一振りの脇差…だから」

宗次郎が再び背後を取ろうとした、その瞬間。

剣心が振り返り、鋭く睨み据える。

「見切ったな…」

斗亜は小さく笑う。

ドガッ。

宗次郎は、いつの間にか剣心の眼前でしゃがみ込んでいた。

逆刃刀の切っ先が、喉元に突きつけられる。

「何の真似です?止めも刺さずに勝ったつもりですか?」

宗次郎は冷えた目で剣心を見る。

「…お主の言う“あの時”“守ってくれなかった”という事、いくら考えても拙者には皆目見当がつかぬ…だが…」

剣心は、ゆっくりと逆刃刀を下げる。
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