第5章 因縁の余燼
畳が沈み、蹴り上げた風が室内を叩いた。
ドガァァァ!!!
刃が来る。
剣心は横へ抜けるようにかわす。
だが宗次郎は、すでにそこにいない。
宗次郎が剣心を見て、ニッと笑った。
笑ったまま、距離が詰まる。
「止まるな剣心!!狙いうちにされるぞ!!」
左之助の叫びが跳ねる。
剣心は前から迫る宗次郎を飛び上がって避けた。
次の瞬間、背中がひやりとした。
「何!?」
剣心は身を捩って抜刀し、宗次郎の一撃を受け止めて弾く。
金属音が炸裂し、火花が散った。
「足だけでなく体のこなしも速いな…その上感情欠落のため先読みが出来ない分余計に早く感じるんだろう…だが飛天御剣流奥義なら…」
斗亜が低く呟く。
剣心の手に力がこもり、柄が軋んだ。
剣心は踏み込む。
逃げ道を奪うように、間合いを潰す。
そして九つの斬撃が一息に降り注いだ。
飛天御剣流――九頭龍閃。
「やった!!」
勝利の確信が、喉まで上がった瞬間だった。
宗次郎の気配が、剣心の正面から消える。
背後。
刃が走る。
「いえ殺るのはこれからです」
ザシュッ。
剣心の背中が裂ける。
熱いものが一気に噴き、着物の背が濡れた。
剣心は体勢を立て直し、クルッと振り返る。
呼吸が乱れ、足元がわずかにぶれる。
「おかしいなぁ…今度はちゃんと仕留めたと思ったのに…」
宗次郎は首を傾げる。
まるで、思い通りにいかない玩具を眺めるみたいに。
「なんて奴だ…」
斗亜は息を飲む。
左之助も、初めて見る光景に言葉を失った。
剣心が背を斬られる。
それは“あり得ない”はずの出来事だった。
「やっぱりおかしいや」
宗次郎のひと言に、四人の目が揃って動く。
宗次郎は刀を肩にポンポンと当てながら考え込む。
「最初のはともかく今のは緋村さんの技の後のスキを狙ったのに仕留められないなんて…おかしいなぁ」
「コラッボウヤ!!そんなこと考えるのは後でいいからさっさと殺っちゃいなさい!!」
由美が苛立ちを隠さず叫ぶ。
同時に左之助も声を張る。
「今だ剣心相手はスキだらけだ!行け!!」
「あ」
宗次郎が足元を見て声を上げる。