第5章 因縁の余燼
その声には殺気よりも、どこか子どもみたいな興味が混じっていた。
宗次郎は片足で畳をトントンと鳴らす。
音は軽いのに、部屋の空気だけがじわりと冷えていく。
「でも不思議ですよね。あなたみたいな人がなんでそんなに強いのか、僕にはホント理解できない」
剣気ではなく、クスッと笑うだけで言い切る。
笑みのまま、刃先の向きだけが研ぎ澄まされていく。
「でもまぁいいや。強いっていってもまだまだ志々雄さんには到底かなう程じゃないし。ちょっと本気出せば僕にだって…ね!」
ドウッ!!
次の瞬間、宗次郎の気配が跳ねた。
床を蹴る音が一つのはずなのに、連続して響く。
ドドドドドドドドド!!
視界の端、上、背後。
宗次郎が部屋中を駆け回り、影だけが走っていく。
空気が裂け、畳が震える。
「(これが走行中の馬車の大久保さんを暗殺し得たこの青年の能力!!)」
斗亜は目を見開く。
シュッ!!
刃が抜ける気配。
剣心は半歩、体を滑らせるように退き、紙一枚でかわす。
頬を風がなで、髪が揺れた。
「あれ?ちょっと失敗か…ま、いいか次で仕留めれば」
宗次郎は刀を肩で弾くようにして呟く。
まるで稽古の失敗を数えるみたいに、軽い。
「おい!今の奴の動きは何でい?」
左之助の声が裏返る。
斗亜は目だけを細めた。
「“縮地”か…しかも神速を更に超えた…超神速の“縮地”」
「縮地?」
「あ。知ってましたか。流石は生粋の剣客ですね。僕知らなかったんですよ~その呼び名志々雄さんに聞くまで…でも斗亜さん実を言うと今のは“縮地”じゃないんですよ」
「「「「!?」」」」
四人の呼吸が一瞬そろって止まる。
宗次郎の笑顔だけが場違いに柔らかい。
「正確に言うと今のは“縮地”の三歩手前…だから緋村さんの目にはちゃんと見えてかわす事が出来たでしょ」
トントントン。
宗次郎はまた畳を軽く鳴らす。
その合図が、次の地獄の予告みたいに聞こえる。
「新月村での尖角との速さ較べから推し測ってそれで十分仕留められると思ったんですけど…すみません、ちょっと甘く見過ぎていましたね。今度は“縮地”の二歩手前で行きます」
ドッ。
今度は軽くない。