第5章 因縁の余燼
「俺…いつ出番なわけ…?」
「今のうちに体力温存させとけ」
ぽんと斗亜の肩に、左之助は手を添える。
「丁寧な挨拶有り難く頂戴致す」
剣心の目が細くなる。
「だが生憎、こちらにはゆるりと会話と洒落込んでいる時間がござらん。退くか闘うか、まず即答願いたい」
「時間?」
宗次郎は首を傾げ、すぐに笑う。
「あぁ葵屋のことですね。葵屋なら大丈夫ですよ。さっきこっちが敗北したって電信入りましたから」
剣心の目が一瞬で鋭くなる。
斗亜は、ふっと息を吐いた。
宗次郎はその反応を面白がるように続けた。
「方治さんもえらく驚いていましたけどね。まぁ事実は事実ですから…でもその代わり、今度はこっちの時間がないんですよ。何せ僕一人で十本刀十人分の働きしなくちゃならなくなりましたから。緋村さんに長々時間を費やせません…という訳で」
宗次郎の手が、すっと柄へ伸びる。
剣心も同時に逆刃刀へ指をかける。
キィィィィン!!
刃が噛み合う。
宗次郎の刀身に細い亀裂が走った。
ピシッ。
「よっしゃあ!!」
左之助が思わず息を漏らし、顔がほころぶ。
だが由美は眉をしかめる。
「たかが小さなヒビ一本、ほとんど互角じゃない」
「あの刀、よく見てみなよ…ただの刀じゃない」
斗亜が宗次郎の刀を指す。
ヒビは浅いが、走り方が嫌に生々しい。
「へぇ」
宗次郎は嬉しそうに笑う。
「見かけは全然変わらないのに今度のはすごいや。いい刀ですね…僕の愛刀の菊一文字則宗がこれじゃあカタなしだ」
「菊一文字!?」
由美が息を呑む。
「使い手も超一流なら刀も超一流…この域の闘いじゃ、ヒビ一つでも差になる」
斗亜が低く言う。
「前の闘いがどうであろうと、緋村剣心の方が抜刀術では一歩速え!今回はいけるぜ!」
「(いや…難しいな…)」
斗亜は奥歯を噛む。
「(兄貴…勝ってくれよ)」
「腕を上げましたね緋村さん。元々強かったけど更に強くなるなんてすごいですよ」
宗次郎は感心したように目を細める。