第5章 因縁の余燼
剣心は本棚に追い詰められる。
蒼紫の攻撃を見極め、回転しながら技を放つ。
「飛天御剣流――龍巻閃!!」
だが、その一撃は受け止められた。
肘打ちが顎を捉え、剣心は吹き飛ばされる。
「小太刀二刀流――陰陽撥止!!」
二本の小太刀が連続して放たれる。
「飛龍閃と同質の飛刀術…!」
弾いた瞬間、もう一本が目前。
避けた刹那、蹴りが腹に突き刺さる。
ドガッ。
「強ぇ…これが…隠密御庭番衆…」
斗亜は息を呑んだ。
蒼紫は小太刀を拾い、静かに言う。
「立て、抜刀斎。俺の知るお前は、これしきでくたばる男ではない。これしきのお前を斃したところで、何の意味も成さん」
剣心に近づき、冷たい眼差しを向ける。
「俺が斃すべきは、幕末最強と謳われた“人斬り抜刀斎”だ」
「そのお前を斃してこそ、四人にくれてやれる。隠密御庭番衆こそが真の最強だという証を」
声に感情はない。
あるのは、覚悟だけ。
「俺はそのために全てを捨てた。誇りも、情も、善も悪も…そして道を分かった同胞達も。立て、抜刀斎。今こそ俺は、お前を斃し最強という華を手にする。その時、俺の幕末も、御頭としての人生も…全て終わる」
「命を捨てる覚悟で来てる…」
斗亜は息を詰める。
「本当に…全部捨てる気か…?」
ドスッ。
剣心は逆刃刀を床に突き刺し、立ち上がった。
「最強の華を手にして終わりだと…?」
声が低く響く。
「ふざけるな、蒼紫!操殿も、翁殿も…般若も式尉も、べし見も、ひょっとこも誰一人として、お前の死など望んでいない!」
ズッ。
逆刃刀を引き抜く。
「…いいだろう、蒼紫」
剣心は構える。
「拙者はお前を倒したくないと思っていた。だが、その半端な想いでは、お前の心は晴れぬとわかった。これより先は…」
剣心の目に、覚悟が宿る。
「全力を以って、お前を倒す!」
逆刃刀が、風を切った。
「但し、あくまで拙者は拙者…“緋村剣心”としてでござる!」
剣心の声は揺れない。
刃に手をかけたまま、それでも“抜刀斎”の影に飲まれないと誓うようだった。
「全力は出す」
剣心は蒼紫を見据えた。