第5章 因縁の余燼
「操殿に連れて帰ると約束したのは、御頭の蒼紫…修羅になりかけている今のお主ではござらん。このまま倒しても、連れて帰っても意味はない」
声は穏やかだが、揺るぎはなかった。
「約束は守る。だが、その相手は“今のお主”ではない」
「…詭弁は、それで終わりか?」
蒼紫は顔の近くで小太刀を構える。
「兄貴…そんな理屈こねてねぇで抜刀しろって…」
「いや」
剣心は即答した。
「おい!意固地になるのもいい加減にしろ!!」
左之助が怒鳴る。
「この蒼紫を、地の利だけで抑え込む」
剣心は一歩前に出る。
「そして、今のままでは以前より拙者には勝てぬと突きつける。そこに元の蒼紫に戻る可能性を見いだすでござる」
「何だよ…そんなこと考えてたのかよ」
斗亜は頬を膨らませる。
「面倒くせぇ闘いだな…」
剣心は小さく頭を下げた。
「お前らしいな」
左之助が歯を見せて笑う。
「許す!とことんやってみな!!」
ダンッ!
蒼紫が床を蹴り、剣心へ一直線に迫る。
剣心は本棚に手をつき、積まれた本を前方へと散らす。
紙片が舞い、視界が乱れる。
蒼紫は一切怯まず、本を切り裂いた。
剣心は本棚に飛び乗り、駆ける。
蒼紫が足をかけた瞬間、剣心は棚から跳び降りた。
「蒼紫!今のお主では、抜刀しない拙者にすら勝てぬ!!」
渾身の体当たり。
本棚が大きく傾く。
ぐらり。
「本棚の真ん中じゃ逃げ場がない!これで…」
「いや…」
左之助が勝利を確信して声を上げた瞬間、斗亜は首を横に振った。
「小太刀二刀流――回天剣舞六連ッ!!」
閃光。
本棚は一瞬で切り裂かれた。
ガキィィィィィン!!
剣心の逆刃刀が、強制的に抜かされる。
「…やっと抜刀したな」
蒼紫の声は、どこか満足げだった。
「それでいい。これでようやく、充分に闘える」
ビュッ。
小太刀が迫る。
剣心は抜ききった逆刃刀で弾くが、肩口から血が弾ける。
蒼紫は間髪入れず、次の攻撃へ。
「マジかよ…」
左之助が息を呑む。