第5章 因縁の余燼
「自業自得だ」
斎藤が煙草を一本取り出し、火をつける。
オレンジの火が一瞬だけ彼の眼を照らし、その眼が相変わらず冷たいことを示した。
「人の忠告を聞かないで防御を疎かにしたお前が悪い」
「うるせぇ…!今さら説教かよ!」
左之助が噛みつくように返すが、声の芯が揺れている。
痛みと、喪失感と、悔しさが混じっている。
「これで残る十本刀は七人…こっちは三人か」
斎藤は煙を吐き、あくまで事務的に数を口にした。
「何ぃ!?」
左之助が跳ね起きようとして、腹を押さえて「ぐぅっ」と呻いた。
斎藤は一瞥もしない。
「その体でいっぱしに戦力のつもりか。特に切り札の右手。二重の極みの連発に加え三重の極みのせいで骨がイカれているだろうが」
煙草の先を軽く揺らしながら、冷酷に言葉を畳む。
「ケガ人はこの先足手まといだ。お前だけここで引き返せ」
ふぅ、と煙が輪になりかけ、崩れた。
「冗談じゃねぇ」
左之助は、歯を食いしばり、包帯の下の右拳をぎゅっと握った。
痛みに顔が歪むのに、その拳はほどけない。
「ここまで来て、志々雄の顔も拝まずに帰れるかよ」
剣心は巻いたさらしをきゅっと結び、次に右手首を固定するための布を取り出す。
「とりあえず止血は済んだでござる。右手の方はさらしを使って固定しよう」
「ちょい貸せ。安慈!」
左之助は剣心から薬を奪うように受け取り、よろよろと安慈の方へ向いた。
倒れた安慈は微動だにせず、あの巨体がただの石の塊のように見えた。
剣心は左之助の肩にそっと手を置く。
「恵殿の良薬でも…あの傷は癒せぬでござるよ」
左之助は立ち止まらない。
安慈の前まで行き、少しだけ顔をしかめる。
怒りじゃない。
悔しさでもない。
どこか、同じ穴を覗いた者同士の複雑な沈黙だ。
「安慈…虐げられる弱い人を救おうとしたお前の気持ちに間違いはねぇ」
左之助は、床に視線を落としながら続ける。
「ただ、やり方が間違ってただけだ。間違いは直せばいい」
言葉を噛み締めるようにして、少しだけ息を吐く。