第5章 因縁の余燼
「そうやって…てめーは、永遠に破壊を続ける気かよ」
斗亜は、その背中をじっと見つめる。
血にまみれた拳。
もう何度も安慈の拳で砕かれかけている肋骨。
立っているのも奇跡だ。
それでも左之助は、拳を握って前に立つ。
「俺だってよ…明治政府は大嫌ぇだ。許す気もしねぇ。お前みてーに、今でもぶっ壊したくなる時がある」
ぎゅっ…と、左之助の血のにじむ手が拳を握る。
「けどな…その明治の中にも、懸命に生きてる連中がちゃんと居んだよ。そして、そんな連中のために未来を信じて闘ってる奴だっているんだ!!」
近くから剣心が静かに聞いている。
斗亜も息を飲む。
左之助は歯を食いしばり叫んだ。
「俺は負けねぇ!!絶対に負けらんねぇ!!!」
腹の底から絞り出した吠え声。
その叫びは、安慈の放つ圧倒的な“破壊の理”すら、かき消すほどの強さを持っていた。
「…なぁ、いいのか?」
斗亜は剣心と斎藤の方を見る。
「この先は殺し合いにもならない、一方的な嬲り殺しが目に見えてるんだけど…」
斎藤は煙草をくわえたまま、薄い目で斗亜を見る。
剣心は、ニコッと優しく微笑んだ。
「“絶対に負けらんねぇ”以前も左之助は同じ台詞を吐いたでござる」
「(あ、言ってた…)」
斗亜は思い返す。
「だが、今度の“負けらんねぇ”は重みが違う」
緋村の横顔は、どこか誇らしげですらあった。
左之助と安慈の睨み合いが、静かに熱を帯びていく。
「うおおお!!!!」
左之助が先に吠え、突撃した。
ドガッ!
バキッ!
ガンッ!!
拳、肘、膝、体重、全て総動員で安慈に向かっていく。
だが、安慈は寸分狂わぬ構えで全てを受け流す。
「二重の極みは外される…手数の勝負…でもあの肉の壁の前じゃ望み薄いな…」
斗亜は歯を食いしばる。
だが剣心は目を細めた。
「決め手は…やはり“二重の極み”」
斎藤も腕を組んで言う。
「その証拠に、安慈は左之助の右手だけに焦点を絞っている」
「左之もそれはわかっている。だから先程から右手は一切出していないでござる」
斗亜はハッと目を見開いた。
「右手…封じて…?」
剣心は頷く。