第5章 因縁の余燼
比叡山・志々雄のアジトへと辿り着いた。
巨大な石門の前に、一人の女性が立っていた。
「誰か居る…」
剣心が足を止めると、その女性は優雅に一礼した。
「ようこそお待ちしておりました。中は奥に進むに連れて迷路になっております。この駒形由美が案内致します」
左之助が舌打ちするように鼻を鳴らす。
「女使って油断を誘う。よくある手だ。気をつけろよ」
「そんな浅はかな手に引っ掛かるのはせいぜいお前だけだ」
「志々雄はそこまで姑息ではござらんよ」
斎藤と剣心が冷静に返すと、左之助がしょんぼり肩を落とす。
「なんだよぉ…みんな冷てぇな…」
「大丈夫だって。落ち込むなよ」
斗亜に肩を軽く叩かれ、左之助はちょっと元気を取り戻した。
「では…中へどうぞ」
由美が石門を押し開くと、ひんやりとした風が四人の足元を撫でていく。
「…これは迷路というより迷宮でござるな」
「恐らく一歩間違えば罠の嵐だ」
薄暗い回廊、松明の明かりがゆらゆらと揺れ、奥へと続く数えきれない分岐路。
天井から落ちる雫の音すら、警告のように響く。
「本気かよ…外敵の侵入を防ぐためっていっても…手の込んだ造りだなー…わぁ…骸骨…」
つり橋の下を覗き込んだ斗亜の顔は一瞬にして青ざめる。
由美がふいに足を止めた。
「そうそう…一つ言い忘れていました」
四人が身構える。
「志々雄様からの伝言。“決闘はあくまで一対一。こちらは一つの間に一人だけ待機させとくんで、そちらも毎回闘う者を一人だけ選出し、残りの三人は決して手出し無用”」
挑発的な笑み。
その背中からは「逃げてもいいですよ」と言っているような余裕すら漂っていた。
「上等!喧嘩はタイマンが一番!」
左之助はパチンと手を叩き、気合十分。
「別に構わんが…ちまちま進むのは面倒だ。俺の相手は一度にまとめてくれんか?」
斎藤は煙草に火をつけ、煙を吐きながら冷たく言う。
由美の視線が剣心と斗亜に向けられる。
「緋村さん…あなたたちは?」
「それでいい」
斗亜は迷いなく答えた。
「拙者も同じ。しかし…」
剣心の声だけは鋭く張り詰めていた。