第4章 因縁の残火
「だとよ。あの野郎、相変わらず仕事だけはキッチリしてやがる」
「つーことで志々雄との決闘は明朝出発。こちとら今すぐにでも突っ込みてぇ気分だってのによ」
左之助は拳を握りしめながら大声を上げる。
葵屋の一室には戦の匂いと、人の気配と、ほんの少しの緊張が満ちていた。
「なんと緋村君、ワシが臥せている間に闘いはそこまで進んでおったのか〜」
翁は目を丸くし、痛む体を起こしながら嘆息する。
「えぇ」
剣心は穏やかな表情で頷いた。
「と、言ってもまだ九人残ってるけどな…」
斗亜は腕を組みながら冷静に補足した。
操は涙を拭いたばかりの顔で、しかし勢いよく立ち上がる。
「さも当然のようにウチに居るけど、アンタ誰!?」
「そうじゃ、ワシもそれが聞きたい」
翁までが不審者を眺めるような目で左之助を睨む。
説明不足にも程があった。
「あ…忘れてた…」
薫があちゃ〜と頭を抱えた。
「ったく…しゃーねーな…俺は相楽左之助。ま、剣心たちの東京のダチってとこだ」
胸を張って自己紹介してみせる左之助だ。
「信用しろっ!」
信用しない目で見る操たちに、とうとう怒鳴る。
「んな事言ったってさ〜」
「ガラ悪いし」
「目つきも悪いし」
「大体髪をおっ立ててる輩にロクなのはおらん!張とかな」
操、近江女、お増、翁が次々と理由を並べ立てる。
四面楚歌という言葉がこれ以上似合う男もいまい。
チラリ、と翁が剣心を見る。
剣心は微笑んで言った。
「左之は拙者が最も頼りにしている男の一人でござるよ」
「お、そうかいそうかい。ほんならヨロシク!左之助君!!」
豹変した翁の態度に、左之助は口を半開きにして固まる。
「鶴の一声だな…」
斗亜が呟くと左之助は悔しそうに眉を寄せる。
「明日は朝が早い。夕食をいただいたら今夜は早めに休ませてもらうでござる」
剣心の言葉で皆は散り、朧げな灯りが揺れる廊下に静けさが戻る。